今回はH26年第4問について解説します。
H26 経済学 第4問
財市場における総需要ADは、消費C、投資I、政府支出Gの合計であるとする。所得をY、限界消費性向を c、所得がゼロでも必要な最低限の定額の消費額をc0とすれば、消費は C=c0+cY と書き表すことができる。総供給ASと所得が等しいとすれば、これらの関係から(1)式と(2)式が得られ、下図のように示すことができる。
いま、上記の標準的なモデルに追加して、所得Yに対して定率tで課税する線形の租税関数tYを考えると、消費関数は C=c0+c(Y-tY) となり(3)式を得る。
また、企業投資が(3)式のIから外生的に増加して I′になった場合を(4)式で表記する。なお、税収は政府支出Gには影響を与えないものとする。
このとき下記の設問に答えよ。(設問1)
この図の中に(4)式を描き、(2)式と比較した場合の記述として最も適切なものはどれか。
ア (2)式と(4)式の傾きは等しく、(4)式の縦軸の切片の位置は(2)式よりも下になる。
イ (4)式の傾きは(2)式よりも急になり、(4)式の縦軸の切片の位置は(2)式よりも上になる。
ウ (4)式の傾きは(2)式よりも急になり、(4)式の縦軸の切片の位置は(2)式よりも下になる。
エ (4)式の傾きは(2)式よりも緩くなり、(4)式の縦軸の切片の位置は(2)式よりも上になる。
オ (4)式の傾きは(2)式よりも緩くなり、(4)式の縦軸の切片の位置は(2)式よりも下になる。(設問2)
他を一定として、企業投資がIからI′へ1.8だけ増加した形で(3)式から(4)式への変化が発生したものとする。このとき、所得Yの変化として最も適切なものはどれか。ただし、限界消費性向cは 0.8、税率tは0.2とする。
ア Yは1増加する。
イ Yは 1.8増加する。
ウ Yは5増加する。
エ Yは9増加する。
オ Yは増加しない。
解説
【設問1】
この問題は経済というよりは、中学2年生の数学の問題です。
1次関数の式とグラフの関係がわかればすぐ解くことができます。
逆に言うと、この問題で悩んでしまう場合は、経済そのものではなく、経済の問題を解く上で前提となっている数学が十分理解できていない可能性がありますので、ざっくりとでいいですので基本的な数学を振り返るといいでしょう。
まとめシートでは、経済の解説の初めに、前提となる数学に関する解説もしていますので、そちらも参考にしていただければと思います。
さて、それでは問題を見てみましょう。
問題では(2)式のグラフと(4)式のグラフの差が問われています。
(2)式、(4)式をYについて整理すると、以下のように表せます。
(2)式 AD=cY+c0+I+G
(4)式 AD2=c(1-t)Y+c0+I’+G
この式を比較すると、
c>c(1-t) ですので、傾きは減少、つまり緩やかになり
c0+I+G<c0+I’+G ですので切片は大きく、つまり上になります。
そのため、(4)式の傾きは(2)式よりも緩くなり、(4)式の縦軸の切片の位置は(2)式よりも上になります。
以上から、正解は選択肢エとなります。
【設問2】
所得Yは財市場の需要ASと供給ADが等しくなった点で均衡します。
この時の投資乗数は、
Y=c(1-t)Y+c0+I’+G のとき
Y=1/(1-c(1-t))×(c0+I’+G) なので、
1/(1-c(1-t))となります。
これに条件であるc=0.8、t=0.2を代入すると
1/0.36 となり、これにIからI′への増加分、1.8をかけると
1.8/0.36=5 となります.
以上から、正解は「Yは5増加する」の選択肢ウとなります。
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