【過去問解説(経済学・経済政策)】R5(再試)第22問 関税

今日は、経済学・経済政策のR5(再試)第22問について解説します。

 経済学・経済政策 R5(再試) 第22問

 下図に基づき、ある生産物に課される輸入関税の効果を考える。この財の国内需要曲線はD、国内供給曲線はSであり、国際価格はPfで与えられている。当初この財については自由貿易政策がとられていたとする。ここで、同国が輸入1単位当たりTの関税を賦課したことで、国内価格はPdに上昇することになった。

この図に関する記述の正誤の組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ。

a 国内価格の上昇による生産者余剰の増加分は、(1)と(2)の合計である。

b 国内価格の上昇による消費者余剰の減少分は、(1)、(2)、(4)、(5)の合計である。

c 政府の関税収入は、(4)、(5)、(6)の合計である。

d 関税政策が生じさせた厚生上の純損失は、(3)である。

〔解答群〕

ア a:正 b:正 c:正 d:誤

イ a:正 b:誤 c:正 d:誤

ウ a:誤 b:正 c:誤 d:正

エ a:誤 b:正 c:誤 d:誤

オ a:誤 b:誤 c:正 d:正

解説

関税に関する問題です。
まとめシートでは、以下の通り解説しています。

自由貿易の場合、自国で生産されている財の価格より海外で生産されている財の方が安いときに海外から輸入が行われます。そのときの余剰の変化について考えます。
国内の財の価格がP1、海外の財の価格がそれよりも安いP2であれば、輸入が行われます。そうすると、消費者としてはP1でしか買えなかったものがP2で買えるようになりますので、需要が図5-4のQ2Dまで拡大し、消費者余剰も図5-4の濃いピンクの枠で囲った範囲まで拡大します。それに対し、生産者としてはこれまでP1で売れていたものが、P2でしか売れなくなってしまいますので、生産量はQ2Sまで減少し、生産者余剰は図5-4の濃いグレーの枠で囲った範囲まで縮小します。また、社会的総余剰は自由貿易を行う前と後では、図5-4の濃いピンクの部分だけ増加します。この増加分は自由貿易による利益を表します。

自由貿易では、海外の安い製品を輸入することで消費者余剰が大きく増加し、社会的総余剰が増加しますが、価格の低下により生産者余剰は低下します。そのため、政府は国内の生産者を保護する目的で関税をかける場合があります。
関税tがかけられた場合、自由貿易ではP2であった価格が、P3(=P2+t)まで上昇します。すると、国内需要はQ3Dに減少し、関税後の消費者余剰は図5-5の薄いピンクの部分となります。それに対し国内供給は価格がP3に上昇した分だけ増加し、Q3Sとなります。
そのため生産者余剰は図5-5の薄いグレーの部分となります。また、関税は政府の収入となりますので、濃いピンクの部分は政府余剰となります。
関税をかける前後で社会的総余剰を比較すると、社会的総余剰は関税をかけた後には図の斜線の部分だけ少なくなってしまいます。これが関税による死荷重です。

それでは選択肢をみていきましょう。

a:誤りです。国内価格の上昇による生産者余剰の増加分は、(1)になります。

b:その通りです。

c:誤りです。政府の関税収入は、(4)になります。

d:誤りです。関税政策が生じさせた厚生上の純損失は、(2)と(5)の合計になります。

以上から、a:誤 b:正 c:誤 d:誤 なので

正解は選択肢エとなります。

 

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