今日は企業経営理論H24第9問から研究開発のマネジメントに関する問題について解説します。
H24 第9問
アライアンスやアウトソーシングに関する次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。
企業を取り巻く環境は、グローバル化や先端技術の開発の進展などに伴って、かつてない要因をはらみながら激しく変化している。このような環境の変化に対応すべく、企業は他の企業や関係機関と連携を模索することが多くなり、戦略的にアライアンスを組む事例も報道されるようになっている。しかし、アライアンスが意図した成果を実現するには、相手をどう選ぶかにも増して、①アライアンスのマネジメントが重要であることを見落としてはならない。
他方、市場を通じて業務の外部化を図るというアウトソーシングも頻繁に実施されるようになった。何をアウトソーシングするかの検討は慎重でなければならないが、②委託者と受託者の関係についても注意しておくべきであることは指摘するまでもない。
(設問1)
文中の下線部①のアライアンスのマネジメントとして最も適切なものはどれか。
ア 相手を上回る出資比率を維持して、意思決定の権限を確保することに留意して、それができない場合はアライアンスを見送るようにしなければならない。
イ 互いに連携によって得られる便益とそのために必要な費用を計算すると、信頼が醸成されなくなるので、アライアンスは期待した効果を生みにくくなることに注意しなければならない。
ウ 提携企業間の人事施策、組織の特性、経営上の価値観などの社風の違いは、相手企業を吸収合併して価値観の一体化を促すことによってしか克服できないことに注意しておくべきである。
エ 連携が長くなるにつれて互いに心が通い合い信頼が醸成されやすいが、そのことによって取り引きの経済評価が甘くならないように注意しなければならない。
オ 連携の中身やお互いの能力について理解しあうことは重要であるが、手の内を見せすぎることになるので、関係が深くなることは避けなければならない。(設問 2)
文中の下線部②のアウトソーシングを戦略的に展開する際に注意すべき点に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
ア アウトソーシングの受託者が多くなるにつれて、利害関係や連携方式が複雑になるので、アウトソーシングの調整を担当する部署を設けて機敏な対応を確保するべきである。
イ アウトソーシングの主たる目的である相乗効果や新規事業の創造に結びつくには、実務レベルでの密な意見交換や共同事業を推進するべきである。
ウ 自社能力の強化に振り向ける資金とアウトソーシングに伴う費用の負担と便益を比較することで、アウトソーシングに踏み切るかどうかの判断をするべきである。
エ 受託者の能力不足や非協力的な態度が判明した場合、アウトソーシングの解消や違約による損害賠償を視野に入れてアライアンスの解消を検討するべきである。
オ 独自な能力をもつ受託者からは、共同事業を通じてその能力を学ぶ姿勢をもつように連携関係を強化するべきである。
解説
企業経営理論では、今回の問題のように設問の前にちょっと長めの分がある問題が時々出題されます。
この手の問題は、
・設問の前の分を読み込まないといけない問題
・特に読み込む必要はない問題
に分けられます。
今回の問題の場合、下線部の内容について問われているだけで特に読み込む必要のない問題でしたが、上記の2タイプがあるということを頭に入れて対応することで、無駄に冒頭の分を読み込まずに済む場合があります。
それでは早速各設問を見ていきましょう。
【設問1】
選択肢アは、「アライアンス」なので、必ずしも出資をする必要があるものだけではなく、さらに、出資比率が低くても双方にメリットがあればアライアンスを検討する価値はあります。そのためこの選択肢は×です。
ちなみに、「アライアンスを見送るようにしなければならない」という結構極端な表現が使われていますので、万が一わからない場合でも、このような極端表現は×の場合が多い、と頭にあれば対応できるかと思います。
選択肢イは、「連携によって得られる便益とそのために必要な費用を計算すると、信頼が醸成されなくなる」とありますが、そんなことはありません。よってこの選択肢は×です。
選択肢ウは、アライアンスでは、異なる企業が社風の違いを克服する必要はありませんし、その克服方法が吸収合併しかない、という表現も極端すぎるので×です。
選択肢エは、その通りですので〇です。
選択肢オは、アライアンスは確かにアライアンス先への技術流出などの可能性もありますが、そのリスクを考慮した上で関係を深くするかどうかは個々の会社次第なので「関係が深くなることは避けなければならない」と断言することはできません。
以上から、正解は選択肢エとなります。
【設問2】
設問2は最も不適切なものを当てる問題です。
選択肢アは、その通りですので〇です。
選択肢イは、そもそもアウトソーシングの主な目的は外部の専門家の知識の活用や経営資源をコア事業に集中させることなどですので、「アウトソーシングの主たる目的である相乗効果や新規事業の創造」という表現が間違いです。
このように、ある言葉の修飾語でさらっと間違いを仕込まれると少し気付きにくい場合もあります。
1回で気付かなかったとしても、他の選択肢を見て、ある程度絞り込んでから、間違えがあること前提でよく見返すと気付くかと思います。
選択肢ウは、その通りで内部でやるか、外部を使うかの判断は費用対効果を十分検討して行う必要があります。
選択肢エは、その通りですので〇です。
選択肢オは、アウトソーシングの目的の1つに外部の専門家の知識の活用があり、アウトソーシングを通じて外部の専門家の知識を学ぶ姿勢を持つことは重要です。
以上から正解は選択肢イとなります。
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