今日は、企業経営理論 H28 第28問について解説します。
売り手とその顧客との関係性に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 航空会社やホテル、スーパーやドラッグストアなどにおける CRM プログラム導入事例に触発された大規模飲料メーカー A 社は、一般的に低コストでできる仕組みであるため、最終消費者を対象とした顧客関係管理システムを導入した。
イ 地域スーパーの経営者 B 氏は、ロイヤルティ・カードを通じて収集した顧客の購買データを見て驚いた。既存顧客の下位1割は、特売商品ばかり購入しており、損失をもたらしているのだ。この種の顧客はとくに、ミルクスキマーと呼ばれる。
ウ ファストフードチェーンの C 社は、ID-POS の導入にあたって、「リレーションシップ・マーケティングは、顧客との関係性を深め、継続・拡大する考え方だから、個々の顧客を特定するための有用なデータを集めていく必要がある」という発想を持っていた。
エ 訪問販売による小売業者 D 社は、ここ数年、既存顧客の高齢化とともに顧客数の減少に悩まされている。そこで、一般的に既存顧客の維持よりも費用がかからないことから、新規顧客の獲得にシフトしていく意思決定を行った。
解説
関係性(リレーションシップ)マーケティングに関する問題です。
関係性(リレーションシップ)マーケティングについては、まとめシートで以下の通り解説しています。
関係性マーケティングとは、リレーションシップマーケティングともいい、企業と外部集団の関係性に着目したマーケティングです。顧客との双方向性や、長期的な関係構築に着目したもので、顧客との良好な関係を長期にわたって継続することで、企業利益の最大化を目指した考え方です。
それでは選択肢をみていきましょう。
選択肢ア:誤りです。CRM(顧客関係管理)とは、Customer Relationship Management の略で、顧客の情報を統合的に管理し、顧客満足度や顧客ロイヤルティを向上させることで、売上や収益性を向上させることを目的としています。CRMは顧客の情報を統合的に管理する必要があるため、低コストでできるとは言えません。
よって、この選択肢は×です。
選択肢イ:誤りです。選択肢の説明のように、特売品や安売りセール品のみを購入する顧客のことを「チェリーピッカー」といいます。ちなみに、ミルクスキーマーとは生乳から高価な生クリーム部分だけを抽出するという意味から、公共性の高い分野で、事業者が収益性の低い領域を切り捨ててしまうことなどを指します。
よって、この選択肢は×です。
選択肢ウ:その通りです。ID-POS を導入すると、ポイントカードなどを活用した顧客ID 付きPOS データにより販売した商品と顧客を紐付け、マーケティングに活用できるというメリットがあります。
よって、この選択肢は〇です。
選択肢エ:誤りです。一般的に既存顧客の維持の方が、新規顧客の獲得よりも低コストであるとされています。
よって、この選択肢は×です。
以上から、正解は選択肢ウとなります。
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