今日は、宅地建物取引士試験 令和2年度(12月) 第6問について解説します。
令和2年度と3年度は、新型コロナウイルスの感染拡大防止措置として、受験者分散の目的で10月と12月の2回試験が実施されました。
★出題テーマ【権利関係-賃貸借】★
AはBにA所有の甲建物を令和2年7月1日に賃貸し、BはAの承諾を得てCに適法に甲建物を転貸し、Cが甲建物に居住している場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
① Aは、Bとの間の賃貸借契約を合意解除した場合、解除の当時Bの債務不履行による解除権を有していたとしても、合意解除したことをもってCに対抗することはできない。
② Cの用法違反によって甲建物に損害が生じた場合、AはBに対して、甲建物の返還を受けた時から1年以内に損害賠償を請求しなければならない。
③ AがDに甲建物を売却した場合、AD間で特段の合意をしない限り、賃貸人の地位はDに移転する。
④ BがAに約定の賃料を支払わない場合、Cは、Bの債務の範囲を限度として、Aに対して転貸借に基づく債務を直接履行する義務を負い、Bに賃料を前払いしたことをもってAに対抗することはできない。
解説
賃貸借契約、転貸借契約に関する問題です。
それではさっそく選択肢をみていきましょう。
選択肢 ①
Aは、Bとの間の賃貸借契約を合意解除した場合、解除の当時Bの債務不履行による解除権を有していたとしても、合意解除したことをもってCに対抗することはできない。
×不適切です。
貸主Aと転貸人Bの合意によって原賃貸借契約が解除された場合、Aは転借人Cに明渡し請求することができません。
ただし、原賃貸借契約を解除した当時、Bの賃料滞納という債務不履行があってAに解除権が有った場合には、Cに対して解除を主張することができるので、明渡しを請求することができます。
つまり、Aは、Bとの間の賃貸借契約を合意解除した場合、解除の当時Bの債務不履行による解除権を有していた場合には、合意解除したことをもってCに対抗することができます。よってこの選択肢は不適切です。
選択肢 ②
Cの用法違反によって甲建物に損害が生じた場合、AはBに対して、甲建物の返還を受けた時から1年以内に損害賠償を請求しなければならない。
〇適切です。
借主は、建物を適切に使用収益する用法遵守義務があります。
もし転借人Cが用法遵守義務に違反して甲建物に損害を与えた場合、貸主Aは借主(転貸人)であるBに対して損害賠償を請求することができます。
なお、用法遵守義務違反による損害賠償請求は、貸主が建物の返還を受けてから1年以内に行わなければならないとされています。
選択肢の説明通りですので、この選択肢は適切です。
選択肢 ③
AがDに甲建物を売却した場合、AD間で特段の合意をしない限り、賃貸人の地位はDに移転する。
〇適切です。
借主へ賃貸物件の引渡しが完了しているときに、所有者が変わった場合は、貸主の地位も新しい所有者に移転します。
甲建物は既に引渡しが完了して、転借人Cが住んでいますね。Dが新たな貸主になります。
選択肢の説明通りですので、この選択肢は適切です。
選択肢 ④
BがAに約定の賃料を支払わない場合、Cは、Bの債務の範囲を限度として、Aに対して転貸借に基づく債務を直接履行する義務を負い、Bに賃料を前払いしたことをもってAに対抗することはできない。
〇適切です。
転借人Cは、貸主Aに対して、転貸借に基づく債務を直接履行する義務があります。ざっくりいうと、貸主Aは転借人Cに直接賃料を請求できるということです。
ただし請求できる範囲は、借主Bの債務の範囲に限られます。これは例えば、AB間の賃料が12万円として、BC間の転貸借の賃料が10万円で、AB間の賃料のほうが高い場合であっても、AがCに直接請求できるのはBC間の転貸借の賃料である10万円まで、ということになります。
またこの場合に、CがもしBに賃料の前払いをしていたとしても、Aから請求があった場合には支払わなくてはいけません。
選択肢の説明通りですので、この選択肢は適切です。
ちなみに、前払いしてしまったCがAにも賃料を払うとなると二重払いになってしまいますね。それは悔しいです。
でも安心してください。CはBに対して返還を求めることができますので、泣き寝入りしかないというわけではありません。
以上から、正解は選択肢①となります。
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