今日は、令和3年度 第33問について解説します。
特定賃貸借標準契約書に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。ただし、特約はないものとする。
① 特定賃貸借標準契約書では、賃貸住宅内の修繕を借主が実施するとしている場合には、転貸借契約終了時の賃貸住宅内の修繕は、貸主と協議をすることなく借主がその内容及び方法を決定することができるとされている。
② 特定賃貸借標準契約書では、転貸借契約を定期建物賃貸借にするか否かは、借主と転借人との間の合意により自由に決定することができるとされている。
③ 特定賃貸借標準契約書では、転借人が賃貸借の目的物を反社会的勢力の事務所に供していた場合には、借主は、催告をすることなく、転貸借契約を解除することができるとされている。
④ 特定賃貸借標準契約書では、転貸借契約から生じる転借料と転借人から交付された敷金は、借主の固有の財産及び他の貸主の財産と分別したうえで、まとめて管理することができるとされている。
解説
特定賃貸借標準契約書に関する問題です。
特定賃貸借標準契約書は、特定賃貸借契約のひな形として、国土交通省が作成・提供しているものです。
それではさっそく選択肢をみていきましょう。
選択肢 ①
特定賃貸借標準契約書では、賃貸住宅内の修繕を借主が実施するとしている場合には、転貸借契約終了時の賃貸住宅内の修繕は、貸主と協議をすることなく借主がその内容及び方法を決定することができるとされている。
×不適切です。
特定賃貸借標準契約書では、「転貸借契約終了時に行う賃貸住宅内の修繕」について明確に記載されているわけではありません。
ただし、借主が行う修繕についての条項が存在します。
特定賃貸借標準契約書の主な内容(維持保全に要する費用の分担)について、まとめシートでは以下の通り解説しています。
借主は、修繕が必要な箇所を発見した場合には、その旨を速やかに貸主に通知して、修繕の必要性を協議するものとされています。
なお、通知が遅れて貸主に損害が生じたときは、借主はこれを賠償するものとされています。
つまり、特定賃貸借標準契約書では、賃貸住宅内の修繕を借主が実施するとしている場合には、転貸借契約終了時の賃貸住宅内の修繕は、貸主に修繕が必要な箇所を通知して、修繕の必要性を協議するものとされています。よってこの選択肢は不適切です。
選択肢 ②
特定賃貸借標準契約書では、転貸借契約を定期建物賃貸借にするか否かは、借主と転借人との間の合意により自由に決定することができるとされている。
×不適切です。
特定賃貸借標準契約書において、転貸にあたっての契約形態(普通建物賃貸借契約/定期建物賃貸借契約)については、頭書に記載されている「転貸の条件」欄で契約態様の条件を設定できる方式となっています。
ここで「普通賃貸借契約に限る」や「定期賃貸借契約に限る」といった契約形態の条件を選択し、それに基づいて借主が転借人に転貸します。
つまり、特定賃貸借標準契約書では、転貸借契約を定期建物賃貸借にするか否かは、借主と転借人との間の合意により自由に決定できるわけではなく、頭書の「転貸の条件」欄に記載された契約形態の条件に従って決定します。よってこの選択肢は不適切です。
選択肢 ③
特定賃貸借標準契約書では、転借人が賃貸借の目的物を反社会的勢力の事務所に供していた場合には、借主は、催告をすることなく、転貸借契約を解除することができるとされている。
〇適切です。
特定賃貸借標準契約書では、反社会勢力に転貸することは禁止されています。
また、特定賃貸借標準契約書の主な内容(転貸の条件等)について、まとめシートでは以下の通り解説しています。
「転借人が反社会的勢力排除の条項に違反した場合は、借主は催告なしに転貸借契約を解除できるようにする」とされています。
選択肢の説明通りですので、この選択肢は適切です。
なお、このような「反社会的勢力排除条項」は、取引から反社会的勢力を排除するために、多くの契約書に記載されており、社会全体での反社会的勢力排除の取り組みとして広く使用されています。
選択肢 ④
特定賃貸借標準契約書では、転貸借契約から生じる転借料と転借人から交付された敷金は、借主の固有の財産及び他の貸主の財産と分別したうえで、まとめて管理することができるとされている。
×不適切です。
特定賃貸借標準契約書の主な内容(敷金の分別管理)について、まとめシートでは以下の通り解説しています。
借主は転借人から受け取った敷金について、整然と管理する方法によって、自己の固有財産および他の賃貸人の財産と分別して管理するものとされています。
つまり、特定賃貸借標準契約書では、転貸借契約から生じる転借料と転借人から交付された敷金は、借主の固有の財産及び他の貸主の財産と分別したうえで、整然と管理する方法によって管理するものとされています。
よってこの選択肢は不適切です。
以上から、正解は選択肢③となります。
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