今日は、令和3年度 第27問について解説します。

令和3年度賃貸不動産経営管理士試験 第27

Aを貸主、Bを借主とする建物賃貸借においてCを連帯保証人とする保証契約に関する次の記述のうち、誤っているものの組合せはどれか。ただし、それぞれの選択肢に記載のない事実はないものとする。

 

ア Bが賃料の支払を怠ったので、AがCに対して保証債務履行請求権を行使した場合、Cは、Bには弁済する資力があり、かつその執行が容易である旨を証明すれば、AがBの財産について執行を行わない間は保証債務の履行を免れる。

 

イ Aの賃料債権を被担保債権とする抵当権がD所有の甲不動産に設定されていた場合、Dの負う責任は甲不動産の範囲に限られるところ、Cの負う責任はCの全財産に及ぶ。

 

ウ Cが自然人ではなく法人の場合は、極度額を書面で定めなくてもよい。

 

エ Bの賃借人の地位がAの承諾の下、第三者に移転した場合、Cが引き続き連帯保証債務を負担することを「保証の随伴性」という。

 

1 ア、イ

2 イ、ウ

3 ウ、エ

4 ア、エ

 

 

解説

保証(連帯保証)に関する問題です。

 

それではさっそく選択肢をみていきましょう。


 

選択肢 ア

Bが賃料の支払を怠ったので、AがCに対して保証債務履行請求権を行使した場合、Cは、Bには弁済する資力があり、かつその執行が容易である旨を証明すれば、AがBの財産について執行を行わない間は保証債務の履行を免れる

 

×不適切です。

保証債務は、債務者が弁済をしないなど、債務の履行をしないときに初めて保証人が責任を負うという性質があり、これを「補充性」といいます。

この補充性に基づいて、保証人には催告の抗弁権と検索の抗弁権が認められます。

選択肢のように、保証人が「債務者に実は支払う能力がある」ということを証明すれば、保証人が保証債務の履行を拒めるという保証債務の性質を「検索の抗弁権」といいます。

検索の抗弁権について、まとめシートでは以下の通り解説しています。

一方で、連帯保証について、まとめシートでは以下の通り解説しています。

連帯保証は、保証よりも責任が重く、連帯保証人には補充性がありません。

つまり、Bが賃料の支払を怠ったので、AがCに対して保証債務履行請求権を行使した場合、Cは、Bには弁済する資力があり、かつその執行が容易である旨を証明したとしても、Cは連帯保証人なので検索の抗弁権はないため、AがBの財産について執行を行わない間は保証債務の履行を免れるというわけではなく、直ちに履行しなくてはいけません。よってこの選択肢は不適切です。

 


 

選択肢 イ

Aの賃料債権を被担保債権とする抵当権がD所有の甲不動産に設定されていた場合、Dの負う責任は甲不動産の範囲に限られるところ、Cの負う責任はCの全財産に及ぶ。

 

〇適切です。

不動産に抵当権をつけることによって債務を担保することを物的担保といい、Dはこの場合「物上保証人」として、担保とした甲不動産の範囲内で賃料債務を保証します。

一方で、連帯保証人であるCは、BのかわりにBの債務を保証する必要があり、範囲の制限がありません。

選択肢の説明通りですので、この選択肢は適切です。


 

選択肢 ウ

Cが自然人ではなく法人の場合は、極度額を書面で定めなくてもよい。

 

〇適切です。

賃貸借契約の場合、保証契約する段階で保証すべき金額は決まっていません。

将来発生するかもしれない一定範囲の債務を保証することを根保証といいます。

個人が根保証契約の保証人になる場合、保証する上限額である極度額を定める必要があります。極度額を定めない個人根保証契約は無効です。なお、法人が保証人になる場合には、極度額を定めなくても根保証契約は有効となります。

選択肢の説明通りですので、この選択肢は適切です。


 

選択肢 エ

Bの賃借人の地位がAの承諾の下、第三者に移転した場合、Cが引き続き連帯保証債務を負担することを「保証の随伴性」という

 

×不適切です。

保証の随伴性について、まとめシートでは以下の通り解説しています。

債権者に変更が生じた場合、保証債務も新債権者へ移転する性質があります。これを保証の「随伴性」といいます。

これは債権者、選択肢で言うと貸主Aが変わった場合の性質であり、債務者である借主Bが賃借権を譲渡して借主が第三者に変更した場合にそのような性質はありません。

つまり、Bの賃借人の地位がAの承諾の下、第三者に移転したからといって、Cは引き続き連帯保証債務を負担することにはなりません

あるいは、Aの保証債権が第三者に移転した場合、Cが引き続き連帯保証債務を負担することを「保証の随伴性」といいます。

よってこの選択肢は不適切です。


 

以上から、正しい選択肢はアとエですので、正解は選択肢④となります。

 

 

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