今日は、宅地建物取引士試験 令和5年度 第28問について解説します。
★出題テーマ【宅建業法-業務上の規制】★
宅地建物取引業者Aの業務に関する次の記述のうち、宅地建物取引業法(以下この問において「法」という。)の規定に違反するものはいくつあるか。
ア Aの従業員Bが、Cが所有する戸建住宅の買取りを目的とした訪問勧誘をCに対して行ったところ、Cから「契約の意思がないので今後勧誘に来ないでほしい」と言われたことから、後日、Aは、別の従業員Dに同じ目的で訪問勧誘を行わせて、当該勧誘を継続した。
イ Aの従業員Eは、Fが所有する戸建住宅の買取りを目的とした電話勧誘をFに対して行った際に、不実のことと認識しながら「今後5年以内にこの一帯は再開発されるので、急いで売却した方がよい。」と説明した。
ウ Aの従業員Gは、Hが所有する戸建住宅の買取りを目的とした電話勧誘をHに対して行おうと考え、23時頃にHの自宅に電話をかけ、勧誘を行い、Hの私生活の平穏を害し、Hを困惑させた。
エ Aは、Jとの間でJが所有する戸建住宅を買い取る売買契約を締結し、法第37条の規定に基づく書面をJに交付したが、Aの宅地建物取引士に、当該書面に記名のみさせ、押印させることを省略した。
1 一つ
2 二つ
3 三つ
4 四つ
解説
業務上の規制に関する問題です。
それではさっそく選択肢をみていきましょう。
選択肢 ア
Aの従業員Bが、Cが所有する戸建住宅の買取りを目的とした訪問勧誘をCに対して行ったところ、Cから「契約の意思がないので今後勧誘に来ないでほしい」と言われたことから、後日、Aは、別の従業員Dに同じ目的で訪問勧誘を行わせて、当該勧誘を継続した。
×宅建業法の規定に違反します。
宅建業者の相手方等が、契約を締結しない旨の意思(勧誘を引き続き受けることを希望しない旨の意思も含みます)を表示したにもかかわらず、当該勧誘を継続する行為は、相手方等の利益の保護に欠けるものとして禁止されています。訪問者を変えたとしても、目的が同じ(断られた契約の勧誘)であれば違反行為に該当します。
つまり、Aの従業員Bが、Cが所有する戸建住宅の買取りを目的とした訪問勧誘をCに対して行ったところ、Cから「契約の意思がないので今後勧誘に来ないでほしい」と言われたことから、後日、Aは、別の従業員Dに同じ目的で訪問勧誘を行わせて、当該勧誘を継続することは、宅建業法の規定に違反します。
選択肢 イ
Aの従業員Eは、Fが所有する戸建住宅の買取りを目的とした電話勧誘をFに対して行った際に、不実のことと認識しながら「今後5年以内にこの一帯は再開発されるので、急いで売却した方がよい。」と説明した。
×宅建業法の規定に違反します。
宅建業者業者は、取引の相手方の判断に重要な影響を及ぼす事項について、故意に事実を告げないことや、不実のことを告げることは禁止されています。 「今後5年以内にこの一帯は再開発される」というような、将来の環境等についての情報は、相手方の判断に重要な影響を及ぼす事項に該当するものですので、不実のことと認識しながら告げることは違反行為に該当します。 つまり、Aの従業員Eは、Fが所有する戸建住宅の買取りを目的とした電話勧誘をFに対して行った際に、不実のことと認識しながら「今後5年以内にこの一帯は再開発されるので、急いで売却した方がよい。」と説明することは、宅建業法の規定に違反します。
選択肢 ウ
Aの従業員Gは、Hが所有する戸建住宅の買取りを目的とした電話勧誘をHに対して行おうと考え、23時頃にHの自宅に電話をかけ、勧誘を行い、Hの私生活の平穏を害し、Hを困惑させた。
×宅建業法の規定に違反します。
深夜や長時間の勧誘など、相手方の私生活や業務の平穏を害するような方法によって、困惑させることは違反行為に該当します。
23時が深夜かどうかは判断が分かれるところかと思いますが、迷惑を覚えさせるような時間に電話したり、訪問することも禁止されていますので、たとえ日中であったとしても、相手方に迷惑をかけるような勧誘をしてはいけません。
つまり、Aの従業員Gは、Hが所有する戸建住宅の買取りを目的とした電話勧誘をHに対して行おうと考え、23時頃にHの自宅に電話をかけ、勧誘を行い、Hの私生活の平穏を害し、Hを困惑させることは、宅建業法の規定に違反します。
選択肢 エ
Aは、Jとの間でJが所有する戸建住宅を買い取る売買契約を締結し、法第37条の規定に基づく書面をJに交付したが、Aの宅地建物取引士に、当該書面に記名のみさせ、押印させることを省略した。
〇宅建業法の規定に違反しません。
宅建業者が37条書面を作成したときには、宅建士に記名をさせる義務があります。押印が必要とはされていません。
つまり、Aは、Jとの間でJが所有する戸建住宅を買い取る売買契約を締結し、法第37条の規定に基づく書面をJに交付したが、Aの宅地建物取引士に、当該書面に記名のみさせ、押印させることを省略することは宅建業法の規定に違反しません。
法改正(R4)の前は、35条書面および37条書面には、宅建士の記名と押印が義務付けられていました。
その名残で、実務上は、それぞれの書面に押印欄がある場合も多いです。宅建業法上は、記名のみで足りることをおさえていただければと思います。
以上から、宅建業法に違反する選択肢はア、イ、ウの3つですので、正解は選択肢③となります。
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