今日は、宅地建物取引士試験 令和3年度(10月) 第11問について解説します。
令和2年度と3年度は、新型コロナウイルスの感染拡大防止措置として、受験者分散の目的で10月と12月の2回試験が実施されました。
★出題テーマ【権利関係-借地借家法/借地権】★
Aは、所有している甲土地について、Bとの間で建物所有を目的とする賃貸借契約(借地契約)を締結する予定です。この際、期間満了時に確実に借地契約を終了させる方法に関する次の記述のうち、借地借家法の規定によれば、誤っているものはどれか。
① 事業の用に供する建物を所有する目的とし、期間を60年と定める場合には、契約の更新や建物の築造による存続期間の延長がない旨を書面で合意すれば、公正証書で合意しなくても、その旨を借地契約に定めることができる。
② 居住の用に供する建物を所有することを目的とする場合には、公正証書によって借地契約を締結するときであっても、期間を20年とし契約の更新や建物の築造による存続期間の延長がない旨を借地契約に定めることはできない。
③ 居住の用に供する建物を所有することを目的とする場合には、借地契約を書面で行えば、借地権を消滅させるため、借地権の設定から20年が経過した日に甲土地上の建物の所有権を相当の対価でBからAに移転する旨の特約を有効に定めることができる。
④ 借地契約がBの臨時設備の設置その他一時使用のためになされることが明らかである場合には、期間を5年と定め、契約の更新や建物の築造による存続期間の延長がない旨を借地契約に定めることができる。
解説
借地借家法(借地権)に関する問題です。
それではさっそく選択肢をみていきましょう。
選択肢 ①
事業の用に供する建物を所有する目的とし、期間を60年と定める場合には、契約の更新や建物の築造による存続期間の延長がない旨を書面で合意すれば、公正証書で合意しなくても、その旨を借地契約に定めることができる。
〇適切です。
存続期間が50年以上であれば、一般定期借地権として、契約の更新や建物の築造による存続期間の延長がない旨を定めることができます。
この場合、書面による(電磁的記録でも可)合意が必要ですが、必ずしも公正証書である必要はありません。
選択肢の説明通りですので、この選択肢は適切です。
選択肢 ②
居住の用に供する建物を所有することを目的とする場合には、公正証書によって借地契約を締結するときであっても、期間を20年とし契約の更新や建物の築造による存続期間の延長がない旨を借地契約に定めることはできない。
〇適切です。
居住の用に供する建物を所有する目的の場合、期間を20年として契約の更新や建物の築造による存続期間の延長がない旨を借地契約に定めることはできません。
選択肢の説明通りですので、この選択肢は適切です。
なお、専ら事業の用に供する建物の所有を目的とする場合には、契約期間を10年以上50年未満として、契約の更新や建物の築造による存続期間の延長がない旨を借地契約に定めることができ、この場合は公正証書によって契約する必要があります。
選択肢 ③
居住の用に供する建物を所有することを目的とする場合には、借地契約を書面で行えば、借地権を消滅させるため、借地権の設定から20年が経過した日に甲土地上の建物の所有権を相当の対価でBからAに移転する旨の特約を有効に定めることができる。
×不適切です。
借地権を消滅させるために、借地権の設定後30年以上を経過した日に、借地権の目的である土地の上の建物を借地権設定者に相当の対価で譲渡する旨を定めることができます。なお、この特約は書面によるものという制限はありません。
つまり、居住の用に供する建物を所有することを目的とする場合には、借地権を消滅させるため、借地権の設定から30年が経過した日に甲土地上の建物の所有権を相当の対価でBからAに移転する旨の特約を有効に定めることができます。(借地契約を書面で行うという制限はありません。)よってこの選択肢は不適切です。
選択肢 ④
借地契約がBの臨時設備の設置その他一時使用のためになされることが明らかである場合には、期間を5年と定め、契約の更新や建物の築造による存続期間の延長がない旨を借地契約に定めることができる。
〇適切です。
臨時設備の設置や、その他一時使用のために借地権を設定したことが明らかな場合には、借地借家法の規定が適用されません。
つまり、借地契約がBの臨時設備の設置その他一時使用のためになされることが明らかである場合には、期間を5年とすることや更新・延長がない旨を定めることができますので、この選択肢は適切です。
以上から、正解は選択肢③となります。
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