今日は、令和3年度(10月) 第12問について解説します。

令和2年度と3年度は、新型コロナウイルスの感染拡大防止措置として、受験者分散の目的で10月と12月の2回試験が実施されました。

 

★出題テーマ【権利関係-借地借家法/借家権】★

令和3年度(10月)宅地建物取引士試験 第12

Aを賃貸人、Bを賃借人とする甲建物の賃貸借契約(以下この問において「本件契約」という。)が令和3年7月1日に締結された場合に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定並びに判例によれば、正しいものはどれか。

①  本件契約について期間の定めをしなかった場合、AはBに対して、いつでも解約の申入れをすることができ、本件契約は、解約の申入れの日から3月を経過することによって終了する。

 

②  甲建物がBに引き渡された後、甲建物の所有権がAからCに移転した場合、本件契約の敷金は、他に特段の合意がない限り、BのAに対する未払賃料債務に充当され、残額がCに承継される。

 

③  甲建物が適法にBからDに転貸されている場合、AがDに対して本件契約が期間満了によって終了する旨の通知をしたときは、建物の転貸借は、その通知がされた日から3月を経過することによって終了する。

 

④  本件契約が借地借家法第38条の定期建物賃貸借契約で、期間を5年、契約の更新がない旨を定めた場合、Aは、期間満了の1年前から6月前までの間に、Bに対し賃貸借が終了する旨の通知をしなければ、従前の契約と同一条件で契約を更新したものとみなされる。

 

 

 

解説

賃貸借契約などに関する問題です。

 

それではさっそく選択肢をみていきましょう。

 


選択肢 ①

本件契約について期間の定めをしなかった場合、AはBに対して、いつでも解約の申入れをすることができ、本件契約は、解約の申入れの日から3月を経過することによって終了する。

 

×不適切です。

期間の定めのない賃貸借契約について、契約の当事者である貸主・借主はともにいつでも解約の申し入れをすることができます。

ただし、貸主から解約の申し入れをする場合は、正当事由が必要であり、正当事由がある場合は、解約の申し入れから6か月を経過することによって賃貸借契約が終了します。

つまり、本件契約について期間の定めをしなかった場合、AはBに対して、いつでも解約の申入れをすることができ、本件契約は、正当事由を具備して解約を申入れてから6か月を経過することによって終了します。よってこの選択肢は不適切です。

 


選択肢 ②

甲建物がBに引き渡された後、甲建物の所有権がAからCに移転した場合、本件契約の敷金は、他に特段の合意がない限り、BのAに対する未払賃料債務に充当され、残額がCに承継される。

 

〇適切です。

借主へ賃貸物件の引渡しが完了しているときに、貸主が変わり、所有権移転登記も完了して新しい貸主に貸主の地位が移転したときには、敷金は新しい貸主が承継するものとされています。

なお、敷金は、賃料の未払いなど借主に債務不履行があった場合、敷金契約に基づいて弁済に充当することができます。

つまり、甲建物がBに引き渡された後に、所有権がAからCに移転した場合、本件契約の敷金は、原則としてBのAに対する未払賃料債務に充当されて、残額がCに承継されることとなりますので、選択肢の説明通り、この選択肢は適切です。

 


選択肢 ③

甲建物が適法にBからDに転貸されている場合、AがDに対して本件契約が期間満了によって終了する旨の通知をしたときは、建物の転貸借は、その通知がされた日から3月を経過することによって終了する。

 

×不適切です。

原賃貸借契約が、期間満了により終了する場合は、転貸借契約も終了することになります。

ただし、貸主は転借人に期間満了による契約の終了を通知する必要があり、通知した日から6か月経過することにより転貸借契約が終了します。

つまり、甲建物が適法にBからDに転貸されている場合、AがDに対して本件契約が期間満了によって終了する旨の通知をしたときは、建物の転貸借は、その通知がされた日から6月を経過することによって終了します。よってこの選択肢は不適切です。

 


選択肢 ④

本件契約が借地借家法第38条の定期建物賃貸借契約で、期間を5年、契約の更新がない旨を定めた場合、Aは、期間満了の1年前から6月前までの間に、Bに対し賃貸借が終了する旨の通知をしなければ、従前の契約と同一条件で契約を更新したものとみなされる

 

×不適切です。

契約期間1年以上の定期建物賃貸借契約の場合、契約期間満了の1年前から6か月前までに終了の通知を行わないと、契約の終了を対抗できません。

ただし、その期間内に終了の通知をしなかった場合でも、その後に通知をすればそれから6か月後に賃貸借契約は終了します。自動で更新することはありません。

つまり、本件契約が借地借家法第38条の定期建物賃貸借契約で、期間を5年、契約の更新がない旨を定めた場合、Aは、期間満了の1年前から6月前までの間に、Bに対し賃貸借が終了する旨の通知をしなければ、従契約の終了を対抗することができません。ただし、その期間を過ぎた場合でも、終了を通知することによって、通知から6か月後に契約は終了します

 


 

以上から、正解は選択肢②となります。

 

 

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