今日は、平成29年度 第24問について解説します。
「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」(国土交通省平成 23 年8月。以下、各問において「ガイドライン」という。)に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
① ガイドラインによれば、通常損耗に関しガイドラインと異なる原状回復の取扱いを定める場合、賃貸借契約締結時に「通常損耗は賃借人の負担である。」と伝えれば足り、その旨を賃貸借契約書に具体的に記載したり、その旨を借主が明確に認識して合意の内容とすることまでは要しない。
② ガイドラインでは、すべての設備等につき、経過年数(入居年数)を考慮している。
③ ガイドラインによれば、借主の喫煙により、居室全体においてクロス等がヤニで変色したり臭いが付着した場合、当該居室全体のクリーニングを借主負担とすることを認めている。
④ ガイドラインによれば、原状回復とは借主の故意により発生した損耗・毀損のみを借主に復旧させることと定義している。
解説
原状回復ガイドラインに関する問題です。
それではさっそく選択肢を確認しましょう。
選択肢 ①
ガイドラインによれば、通常損耗に関しガイドラインと異なる原状回復の取扱いを定める場合、賃貸借契約締結時に「通常損耗は賃借人の負担である。」と伝えれば足り、その旨を賃貸借契約書に具体的に記載したり、その旨を借主が明確に認識して合意の内容とすることまでは要しない。
×不適切です
ガイドラインによると、通常損耗分の補修費用を借主に負担させる特約も有効です。
しかし、次の要件を満たしていなければ効力が争われることがあります。
- 特約の必要性があり、かつ暴利的でないなどの客観的・合理的理由があること
- 借主が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識していること
- 借主が特約による義務負担について意思表示をしていること
つまり、ガイドラインによれば、通常損耗に関しガイドラインと異なる原状回復の取扱いを定める場合、賃貸借契約締結時に「通常損耗は賃借人の負担である。」と伝えるだけでは足りず、その旨を賃貸借契約書に具体的に記載したり、その旨を借主が明確に認識して合意の内容とする必要があります。よってこの選択肢は不適切です。
選択肢 ②
ガイドラインでは、すべての設備等につき、経過年数(入居年数)を考慮している。
×不適切です
ガイドラインでは、建物本体と同様に長期間の使用に耐えられる部位で、部分補修が可能な部位については、経過年数を考慮することになじまないとされています。
たとえば、フローリングのように部分補修が可能な設備は、補修費用の全額を借主が負担しても貸主が利益を得るわけではないため、経過年数を考慮する必要がないとされています。
また、畳表のように消耗品としての性格が強いものは、減価償却の考え方になじまないため、経過年数を考慮せず、借主の負担とするのが適当とされています。
つまり、ガイドラインでは、一部の設備や部位については、経過年数を考慮せず、借主の負担とするのが妥当とされています。よってこの選択肢は不適切です。
選択肢 ③
ガイドラインによれば、借主の喫煙により、居室全体においてクロス等がヤニで変色したり臭いが付着した場合、当該居室全体のクリーニングを借主負担とすることを認めている。
〇適切です。
選択肢の説明の通り、ガイドラインによれば、借主の喫煙により、居室全体においてクロス等がヤニで変色したり臭いが付着した場合、当該居室全体のクリーニングを借主負担とすることを認めていますので、この選択肢は適切です。
選択肢 ④
ガイドラインによれば、原状回復とは借主の故意により発生した損耗・毀損のみを借主に復旧させることと定義している。
×不適切です
ガイドラインによれば、 原状回復とは「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義しています。よってこの選択肢は不適切です。
以上から、正解は選択肢③となります。
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