今日は、令和5年度 第7問について解説します。
次の記述のうち、居住用賃貸借契約に定める約定として不適切なものはいくつあるか。
ア 賃借人が支払を怠った賃料の合計額が賃料3か月分以上に達したとき、賃貸人は無催告にて賃貸借契約を解除し、賃借人の残置物がある場合はこれを任意に処分することができる。
イ 賃借人が支払を怠った賃料の合計額が賃料3か月分以上に達したとき、連帯保証人は、無催告にて賃貸借契約を解除し、賃借人の残置物がある場合はこれを任意に処分することができる。
ウ 賃借人が契約期間満了日に貸室を明け渡さなかった場合、賃借人は契約期間満了日の翌日から明渡しが完了するまでの間、賃料相当額の損害金を賃貸人に支払うものとする。
エ 賃借人が契約期間満了日に貸室を明け渡さなかった場合、賃借人は契約期間満了日の翌日から明渡しが完了するまでの間、賃料の2倍相当額の使用損害金を賃貸人に支払うものとする。
1 1つ
2 2つ
3 3つ
4 4つ
解説
賃貸借契約の約定に関する問題です。
それではさっそく選択肢をみていきましょう。
選択肢 ア
賃借人が支払を怠った賃料の合計額が賃料3か月分以上に達したとき、賃貸人は無催告にて賃貸借契約を解除し、賃借人の残置物がある場合はこれを任意に処分することができる。
×不適切です。
一般的に、賃料を2~3か月分払わない(債務不履行)場合は、契約解除の原因となり得ます。
債務不履行による契約解除について、まとめシートでは以下の通り解説しています。
債務不履行を理由に解除する場合は、原則として、相手方への意思表示(催告)が必要になります。
ただし、無催告解除が認められる場合があります。賃料不払いが3か月以上におよぶことが、重大な義務違反であって賃貸借契約の継続を著しく困難にさせるものと認められる場合には、無催告解除を認める特約は有効になる場合があります。
また、残置物を任意に処分できるという特約は、違法となりますので無効です。
つまり、賃借人が支払を怠った賃料の合計額が賃料3か月分以上に達したとき、賃貸人は無催告にて賃貸借契約を解除するという約定は有効となる場合があります。ただし、賃借人の残置物がある場合はこれを任意に処分することができるという約定は無効です。
選択肢 イ
賃借人が支払を怠った賃料の合計額が賃料3か月分以上に達したとき、連帯保証人は、無催告にて賃貸借契約を解除し、賃借人の残置物がある場合はこれを任意に処分することができる。
×不適切です。
連帯保証人は、賃貸借契約の当事者ではないため、通常は解除をする権利はありません。約定を定めた場合であっても、借主の利益を害するものとして、無効になると考えられます。
また、残置物を任意に処分できるという特約は、違法となりますので無効です。
つまり、賃借人が支払を怠った賃料の合計額が賃料3か月分以上に達したとき、連帯保証人は、無催告にて賃貸借契約を解除するという約定は、無効になると考えられます。なお、賃借人の残置物がある場合はこれを任意に処分することができるという約定は無効です。
選択肢 ウ
賃借人が契約期間満了日に貸室を明け渡さなかった場合、賃借人は契約期間満了日の翌日から明渡しが完了するまでの間、賃料相当額の損害金を賃貸人に支払うものとする。
〇適切です。
契約期間を終了しても、借主が明け渡さない場合、賃料相当額の損害金を貸主に支払う必要があります。
よって選択肢の約定は有効となります。
選択肢 エ
賃借人が契約期間満了日に貸室を明け渡さなかった場合、賃借人は契約期間満了日の翌日から明渡しが完了するまでの間、賃料の2倍相当額の使用損害金を賃貸人に支払うものとする。
〇適切です。
契約期間を終了しても、借主が明け渡さない場合で使用損害金を請求する場合、特約がなければ通常は賃料相当額となりますが、判例によると、賃料の2倍の額であっても不当であるとまではいえないとされています。
よって選択肢の約定は有効となります。
以上から、不適切な選択肢はアとイの2つですので、正解は選択肢②2つ となります。
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