今日は、令和5年度 第18問について解説します。
賃貸住宅管理業法における登録を受けた賃貸住宅管理業者の財産の分別管理に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。なお、管理受託契約に基づいて受領する家賃等を管理する口座を「家賃等管理口座」、賃貸住宅管理業者の固有の財産を管理する口座を「固有財産管理口座」とする。
① 賃借人から受領した家賃等から管理報酬分を支払うものとしている場合には、あらかじめ賃貸人に引き渡す家賃等と管理報酬相当額とを分けて、前者のみを家賃等管理口座に入金させなければならない。
② 管理戸数が20戸以下の賃貸住宅管理業者は、家賃等管理口座と固有財産管理口座を一つの口座とし、家賃等と自己の固有の財産とを、帳簿により勘定上直ちに判別できる状態で管理することができる。
③ 家賃等管理口座に預入された金銭は、その全額を直ちに賃貸人に交付しなければならず、賃貸住宅管理業者の固有財産に属する金銭のうちの一定額を、家賃等管理口座に残したままにしておくことはできない。
④ 家賃等管理口座に預入された金銭は、現金預金や管理手数料収入、修繕費などの勘定科目に、物件名や顧客名を入れた補助科目を付して仕分けを行うことにより、他の管理受託契約に基づく管理業務において受領する家賃等との分別管理とすることができる。
解説
賃貸住宅管理業者が行うべき、金銭の分別管理に関する問題です。
まとめシートでは、金銭の分別管理について、以下の通り解説しています。
賃貸住宅管理業者は、管理業務で受領する家賃や敷金、共益費等の金銭を、整然と整理する方法によって、自己の固有財産や他の管理受託契約に基づく管理業務で受領した金銭と分別して管理しなければいけません。
それでは選択肢をみていきましょう。
選択肢①
賃借人から受領した家賃等から管理報酬分を支払うものとしている場合には、あらかじめ賃貸人に引き渡す家賃等と管理報酬相当額とを分けて、前者のみを家賃等管理口座に入金させなければならない。
×不適切です。
家賃等管理口座と、固有財産管理口座は、分ける必要があります。ただし、それぞれの口座のいずれか一方に、一時的に固有財産と家賃等の金銭が同時に預入されている状態になることは問題なく、その場合は速やかに移し替えることとされています。
このようなケースについて、まとめシートでは以下の通り解説しています。
借主から、家賃等を家賃等管理口座に振り込んでもらう形で受領し、その口座から管理報酬を固有財産管理口座に移し替えることは問題ないとされています。
つまり、賃借人から受領した家賃等から管理報酬分を支払うものとしている場合には、賃貸人に引き渡す家賃等と管理報酬相当額とを一時的に全額家賃等管理口座に預入することは問題なく、その場合は速やかに家賃等管理口座から、管理報酬額を固有財産管理口座に移し替える必要があります。よってこの選択肢は不適切です。
選択肢②
管理戸数が20戸以下の賃貸住宅管理業者は、家賃等管理口座と固有財産管理口座を一つの口座とし、家賃等と自己の固有の財産とを、帳簿により勘定上直ちに判別できる状態で管理することができる。
×不適切です。
賃貸住宅管理業を営もうとする者は、国土交通大臣の登録を受ける必要がありますが、管理戸数が200戸未満であるときは登録を受けなくても良いとされています。ただし200戸未満であっても登録を受けることは可能で、登録を受ける場合は賃貸住宅管理業法の規制の対象となります。
この選択肢の管理業者は、200戸未満で登録を受けた、賃貸住宅管理業法上の賃貸住宅管理業者ということになります。賃貸住宅管理業者である以上は当然、賃貸住宅管理業者が行うべき、金銭の分別管理をしなければいけません。
つまり、管理戸数が20戸以下の賃貸住宅管理業者は、家賃等管理口座と固有財産管理口座の口座をそれぞれ分ける必要があり、家賃等管理口座に預入されている金銭は、帳簿により勘定上直ちに判別できる状態で管理する必要があります。よってこの選択肢は不適切です。
選択肢③
家賃等管理口座に預入された金銭は、その全額を直ちに賃貸人に交付しなければならず、賃貸住宅管理業者の固有財産に属する金銭のうちの一定額を、家賃等管理口座に残したままにしておくことはできない。
×不適切です。
貸主に確実に家賃等を渡すために、適切な範囲において家賃等管理口座に管理業者の固有財産を一定額残しておくことは差し支えないとされています。なお、貸主に家賃等を交付する時期については、原則は管理受託契約に定める期日の通りと考えられます。
つまり、家賃等管理口座に預入された金銭は、管理受託契約に定める期日の通りに賃貸人に交付しなければならず、賃貸住宅管理業者の固有財産に属する金銭のうちの一定額を、貸主に確実に家賃等を渡すために、適切な範囲において家賃等管理口座に残したままにしておくことは差し支えありません。よってこの選択肢は不適切です。
選択肢④
家賃等管理口座に預入された金銭は、現金預金や管理手数料収入、修繕費などの勘定科目に、物件名や顧客名を入れた補助科目を付して仕分けを行うことにより、他の管理受託契約に基づく管理業務において受領する家賃等との分別管理とすることができる。
〇適切です。
家賃等管理口座に預入された金銭は、貸主ごと物件ごとなどと口座を分けることまでは求められませんが、帳簿上は分けて管理する必要があります。
帳簿を分けて管理するというのは、家賃等管理口座に預入されている金額のうち、「何円分が管理手数料で、その中でも何円分はこの物件のものです」という仕分けができる状態にするということですが、簿記においては、取引ごとに勘定科目という項目ごとに分類分けして、さらに細かい内訳として補助科目を付けて仕訳をする、という作業になります。
よってこの選択肢は適切です。
以上から、正解は選択肢④となります。
金銭の分別管理などの、賃貸住宅管理業法上の業務の規律については12項目あり、例年テーマを変えて出題されています。
ぜひ関連解説もあわせてご確認いただければと思います。
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