今日は、令和3年度 第25問について解説します。
建物賃貸借契約における必要費償還請求権、有益費償還請求権及び造作買取請求権に関する次の記述のうち、適切なものの組合せはどれか。
ア 賃貸物件に係る必要費償還請求権を排除する旨の特約は有効である。
イ 借主が賃貸物件の雨漏りを修繕する費用を負担し、貸主に請求したにもかかわらず、貸主が支払わない場合、借主は賃貸借契約終了後も貸主が支払をするまで建物の明渡しを拒むことができ、明渡しまでの賃料相当損害金を負担する必要もない。
ウ 借主が賃貸物件の汲取式トイレを水洗化し、その後賃貸借契約が終了した場合、借主は有益費償還請求権として、水洗化に要した費用と水洗化による賃貸物件の価値増加額のいずれか一方を選択して、貸主に請求することができる。
エ 借主が賃貸物件に空調設備を設置し、賃貸借契約終了時に造作買取請求権を行使した場合、貸主が造作の代金を支払わないときであっても、借主は賃貸物件の明渡しを拒むことができない。
1 ア、イ
2 イ、ウ
3 ウ、エ
4 ア、エ
解説
費用償還請求権などに関する問題です。
それではさっそく選択肢をみていきましょう。
選択肢 ア
賃貸物件に係る必要費償還請求権を排除する旨の特約は有効である。
〇適切です。
賃貸物件の修繕費用などを借主が負担した場合、借主は貸主にその費用を請求することができます。
費用償還請求について、まとめシートでは以下の通り解説しています。
借主が、建物の現状維持や通常の使用ができる状態に保存するための必要費を負担した場合、借主は直ちに全額支払うように貸主に請求することができるとされていますが、必要費の償還請求権を排除する特約は有効とされています。
選択肢の説明通りですので、この選択肢は適切です。
選択肢 イ
借主が賃貸物件の雨漏りを修繕する費用を負担し、貸主に請求したにもかかわらず、貸主が支払わない場合、借主は賃貸借契約終了後も貸主が支払をするまで建物の明渡しを拒むことができ、明渡しまでの賃料相当損害金を負担する必要もない。
×不適切です。
必要費と有益費について、まとめシートでは以下の通り解説しています。
借主が必要費や有益費を貸主に請求したにもかかわらず、その費用を返してくれない場合、借主は費用を返してくれるまで建物を明渡しを拒む権利(留置権)があります。
ですので、雨漏りの修繕にかかる必要費を借主が支払って貸主に請求したのに支払ってもらえない場合、賃貸借契約終了後でも、支払ってもらえるまで明渡しを拒むことができますが、明渡しをしない期間、賃料の支払いを逃れるというわけではありません。
つまり、借主が賃貸物件の雨漏りを修繕する費用を負担し、貸主に請求したにもかかわらず、貸主が支払わない場合、借主は賃貸借契約終了後も貸主が支払をするまで建物の明渡しを拒むことができ、明渡しまでの賃料相当損害金を負担する必要があります。よってこの選択肢は不適切です。
選択肢 ウ
借主が賃貸物件の汲取式トイレを水洗化し、その後賃貸借契約が終了した場合、借主は有益費償還請求権として、水洗化に要した費用と水洗化による賃貸物件の価値増加額のいずれか一方を選択して、貸主に請求することができる。
×不適切です。
もう一度、必要費と有益費についてのまとめシートを確認してみましょう。
借主が有益費を支払った場合、契約終了の時点で価値の増加が現存する場合には、借主が支出した額または価値の増加額のどちらか、貸主が選んだほうについて、借主は費用償還請求ができます。
つまり、借主が賃貸物件の汲取式トイレを水洗化し、その後賃貸借契約が終了した場合、借主は有益費償還請求権として、水洗化に要した費用と水洗化による賃貸物件の価値増加額のいずれか貸主が選択したほうの額を、貸主に請求することができます。よってこの選択肢は不適切です。
選択肢 エ
借主が賃貸物件に空調設備を設置し、賃貸借契約終了時に造作買取請求権を行使した場合、貸主が造作の代金を支払わないときであっても、借主は賃貸物件の明渡しを拒むことができない。
〇適切です。
造作買取請求権について、まとめシートでは以下の通り解説しています。
貸主の承諾を得て付加した造作は、賃貸借契約が終了するときに、借主は貸主に対して買い取るように請求できます。貸主が造作の代金を支払わないときは、借主はその造作の引渡しを拒むことはできますが、建物の引渡しを拒むことはできません。
選択肢の説明通りですので、この選択肢は適切です。
以上から、正しい選択肢はアとエですので、正解は選択肢④となります。
賃貸借契約において、貸主・借主それぞれにどのような権利・義務があるかという内容ついては、必要費、有益費、造作買取請求、用法遵守義務、原状回復義務など、出題されやすいテーマが様々あります。
ぜひ関連解説もご確認いただき、理解を深めていただければと思います。
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