今日は、令和3年度 第16問について解説します。
屋上と外壁の管理に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
① 陸屋根では、土砂や落ち葉、ゴミ等が排水口をふさいでしまうと、屋上に雨水が溜まり、防水の性能に影響を与え、漏水の原因にもなる。
② 傾斜屋根(カラーベスト等)は、夏の温度上昇、冬の温度低下の繰り返しにより、素地自体の変形やゆがみ等を起こすことがあるが、雨漏れの要因とはならない。
③ コンクリート打ち放しの外壁は、鉄筋発錆に伴う爆裂を点検する必要はない。
④ タイル張り外壁の定期調査方法で、接着剤張り工法以外は、劣化等によりタイルが剥離するおそれがあるので、原則竣工後10年ごとに全面打診等の調査を行わなければならない。
解説
建物の屋根・外壁などに関する問題です。
それではさっそく選択肢をみていきましょう。
選択肢 ①
陸屋根では、土砂や落ち葉、ゴミ等が排水口をふさいでしまうと、屋上に雨水が溜まり、防水の性能に影響を与え、漏水の原因にもなる。
〇適切です。
陸屋根(ろくやね、りくやね)は、勾配のない屋根です。
概要、メンテナンス等について、まとめシートでは以下の通り解説しています。
勾配がなく平坦なため、土砂や落ち葉、ごみがたまり排水口(ルーフドレイン)がふさがれることがあります。
陸屋根には防水層を施していますが、排水口がふさがれて雨水が溜まってしまうと、防水層を劣化させるため、漏水につながることがあります。
選択肢の説明通りですので、この選択肢は適切です。
選択肢 ②
傾斜屋根(カラーベスト等)は、夏の温度上昇、冬の温度低下の繰り返しにより、素地自体の変形やゆがみ等を起こすことがあるが、雨漏れの要因とはならない。
×不適切です。
傾斜屋根は、傾斜のある屋根のことで、勾配屋根とも呼ばれます。
概要、メンテナンス等について、まとめシートでは以下の通り解説しています。
傾斜屋根には、金属屋根、スレート屋根、瓦屋根などがあります。なお、選択肢に書いている「カラーベスト」というのは、スレート屋根材の代表的な商品名のことです。
傾斜屋根は、夏の日差しや冬の寒気を受け、表面温度の上昇と低下を繰り返すことによって、素地に変形やゆがみなどが生じ、割れや雨漏りの原因となることがあります。
つまり、傾斜屋根(カラーベスト等)は、夏の温度上昇、冬の温度低下の繰り返しにより、素地自体の変形やゆがみ等を起こすことがあり、雨漏れの要因となることもあります。よってこの選択肢は不適切です。
選択肢 ③
コンクリート打ち放しの外壁は、鉄筋発錆に伴う爆裂を点検する必要はない。
×不適切です。
コンクリート打ち放し外壁の概要、メンテナンス等について、まとめシートでは以下の通り解説しています。
コンクリート打ち放しの外壁では、鉄筋が錆びることで爆裂現象(コンクリートが割れて鉄筋が露出する現象)が発生することがあります。
これにより建物の構造が劣化し、さらに漏水の原因となることがあるため、定期的な点検が必要です。
つまり、コンクリート打ち放しの外壁は、鉄筋発錆に伴う爆裂を点検する必要があります。よってこの選択肢は不適切です。
なお、コンクリート打ち放しの外壁は、コンクリートの塩害、中性化、凍害、鉄筋発錆による爆裂などについての点検が必要です。
選択肢 ④
タイル張り外壁の定期調査方法で、接着剤張り工法以外は、劣化等によりタイルが剥離するおそれがあるので、原則竣工後10年ごとに全面打診等の調査を行わなければならない。
×不適切です。
タイル張りの外壁は、原則として竣工後10年ごとに全面打診または赤外線調査を行う必要があります。
なお、一定の条件を満たせば、有機系接着剤張り工法によるものは引張接着試験による調査方法も認められています。
また、乾式工法(金具留め)については、目視での調査を行うものとされています。
この選択肢では、「全面打診『等』の調査」と書かれているため、赤外線調査や、引張接着試験による調査、目視による調査も『等』に包括されていると考えても良いと推察しますが、「接着剤張り工法以外は」調査を行わなければならないという点が不適切であるといえます。
接着剤張り工法についても、劣化等によりタイルが剥離するおそれがあるため、原則竣工後10年ごとに全面打診調査(または赤外線調査)を行う必要があります。
つまり、タイル張り外壁の定期調査方法で、劣化等によりタイルが剥離するおそれがあるので、原則竣工後10年ごとに全面打診等の調査を行わなければなりません。(なお、有機系接着剤張り工法によるものは引張接着試験による調査も認められており、乾式工法(金具留め)については、目視での調査を行うものとされています。)よってこの選択肢は不適切です。
以上から、正解は選択肢①となります。
ぜひ関連解説もあわせてご確認いただければと思います。
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