今日は、賃貸不動産経営管理士試験 令和2年度 第29問について解説します。
建物明渡しの訴訟及び強制執行に関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
ア 公正証書により賃貸借契約を締結したとしても、公正証書に基づき建物明渡しの強制執行を行うことはできない。
イ 訴額が60万円以下の場合は、少額訴訟を提起することにより建物の明渡しを求めることができる。
ウ 即決和解(起訴前の和解)が成立したとしても、和解調書に基づき建物明渡しの強制執行を行うことはできない。
エ 裁判上の和解が成立した場合、和解調書に基づき建物明渡しの強制執行を行うことができる。
1 ア、イ
2 イ、ウ
3 ア、エ
4 ウ、エ
解説
建物明渡しの債務名義に関する問題です。
それではさっそく選択肢をみていきましょう。
選択肢 ア
公正証書により賃貸借契約を締結したとしても、公正証書に基づき建物明渡しの強制執行を行うことはできない。
〇適切です。
明渡しの強制執行を行うためには、明渡しの権利があることを認める債務名義が必要です。
賃貸借契約書の公正証書は、明渡しの債務名義とはなりませんので、明渡しの強制執行をするためには訴訟を提起して判決を得る必要があります。
(公正証書に強制執行認諾文言が含まれていれば、金銭の支払い請求については債務名義となります。)
選択肢の説明通り、公正証書に基づいて建物明渡しの強制執行を行うことはできませんので、この選択肢は適切です。
選択肢 イ
訴額が60万円以下の場合は、少額訴訟を提起することにより建物の明渡しを求めることができる。
×不適切です。
少額訴訟は、金銭の支払いを求める請求に限定されており、建物明渡し請求には利用できません。
つまり、訴額が60万円以下の場合は、少額訴訟を提起することにより金銭の支払いを求めることができます。(建物の明渡しを求めることはできません。)よってこの選択肢は不適切です。
選択肢 ウ
即決和解(起訴前の和解)が成立したとしても、和解調書に基づき建物明渡しの強制執行を行うことはできない。
×不適切です。
即決和解とは、裁判外で当事者間に合意がある場合、つまり訴訟を提起する前に話し合いが成立している際に、裁判所がその内容を確認し、適切であると認めるための手続きです。
即決和解が成立すると、和解調書は確定判決と同一の効力を持つため、記載された合意内容に基づいて金銭の支払い請求や建物の明渡し請求の強制執行が可能です。
つまり、即決和解(起訴前の和解)が成立した場合、和解調書に基づき建物明渡しの強制執行を行うことができます。
選択肢 エ
裁判上の和解が成立した場合、和解調書に基づき建物明渡しの強制執行を行うことができる。
〇適切です。
裁判上の和解が成立した場合、その和解調書は判決と同等の効力を持つため、和解調書を債務名義として、建物明渡しの強制執行をすることが可能です。
選択肢の説明通りですので、この選択肢は適切です。
以上から、正しい選択肢はアとエですので、正解は選択肢③となります。
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