今日は、賃貸不動産経営管理士試験 令和2年度 第26問について解説します。
賃貸借契約における保証に関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
ア 賃貸人の地位が移転した場合は、保証人は、新賃貸人に対しては保証債務を負わない。
イ 賃借人の債務を連帯保証している保証人は、賃借人が賃料を支払うだけの資力があるにもかかわらず滞納している場合、保証債務の履行を拒否することができる。
ウ 保証人は、賃借人の委託を受けて賃貸借契約上の賃借人の一切の債務を保証している場合、賃借人が賃料を滞納しているかどうかについて賃貸人に情報提供を求めることができる。
エ 個人が新たに締結される賃貸借契約の保証人となる場合、連帯保証であるか否かにかかわらず、極度額を定めなければ保証契約は効力を生じない。
1 ア、イ
2 イ、ウ
3 ウ、エ
4 ア、エ
解説
保証(連帯保証)に関する問題です。
それではさっそく選択肢をみていきましょう。
選択肢 ア
賃貸人の地位が移転した場合は、保証人は、新賃貸人に対しては保証債務を負わない。
×不適切です。
主たる債務の債権者に変更が生じた場合、保証債務も債権者の変更に伴って新債権者へ移転する性質があります。これを保証債務の「随伴性」といいます。
つまり、賃貸人の地位が移転した場合は、保証人は、新賃貸人に対しても保証債務を負うものとなります。よってこの選択肢は不適切です。
選択肢 イ
賃借人の債務を連帯保証している保証人は、賃借人が賃料を支払うだけの資力があるにもかかわらず滞納している場合、保証債務の履行を拒否することができる。
×不適切です。
保証債務は、債務者が弁済をしないときに初めて保証人が責任を負うという性質があり、これを『補充性』といいます。
この補充性に基づいて、保証人には催告の抗弁権と検索の抗弁権が認められます。
選択肢のように、保証人が「借主は賃料を支払うだけの資力がある」ということを証明すれば、保証人が保証債務の履行を拒めるという保証債務の性質を「検索の抗弁権」といいます。
検索の抗弁権について、まとめシートでは以下の通り解説しています。
一方で、連帯保証について、まとめシートでは以下の通り解説しています。
連帯保証は、保証よりも責任が重く、連帯保証人には補充性がありません。
つまり、賃借人の債務を連帯保証している保証人は、賃借人が賃料を支払うだけの資力があるにもかかわらず滞納している場合であっても、保証債務の履行を拒否することができません。(連帯保証人には検索の抗弁権がありません。)よってこの選択肢は不適切です。
選択肢 ウ
保証人は、賃借人の委託を受けて賃貸借契約上の賃借人の一切の債務を保証している場合、賃借人が賃料を滞納しているかどうかについて賃貸人に情報提供を求めることができる。
〇適切です。
保証人保護の観点から、債権者は保証人の請求があれば、主たる債務の元本および主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償、不履行の有無などに関する情報を提供しなければいけません。
選択肢の説明の通り、保証人は貸主に、借主が賃料を滞納しているかどうかの情報提供を求めることができますので、この選択肢は適切です。
選択肢 エ
個人が新たに締結される賃貸借契約の保証人となる場合、連帯保証であるか否かにかかわらず、極度額を定めなければ保証契約は効力を生じない。
〇適切です。
賃貸借契約の場合、保証契約する段階で保証すべき金額は決まっていません。
将来発生するかもしれない一定範囲の債務を保証することを根保証といいます。
個人が根保証契約の保証人になる場合、保証する上限額である極度額を定める必要があります。極度額を定めない個人根保証契約は無効です。なお、法人が保証人になる場合には、極度額を定めなくても根保証契約は有効となります。
選択肢の説明の通り、連帯保証かどうかは関係なく、極度額を定めなければ保証契約は効力を生じませんので、この選択肢は適切です。
以上から、正しい選択肢はウとエですので、正解は選択肢③となります。
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