今日は、令和2年度 第17問について解説します。
宅地建物取引業法が定める賃貸物件の媒介の報酬に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
① 居住用建物の賃貸借の媒介報酬は、借主と貸主のそれぞれから賃料の0.5か月分とこれに対する消費税を受け取ることができるのが原則だが、借主及び貸主双方の承諾がある場合には、それぞれから報酬として賃料の1か月分と消費税を受け取ることができる。
② 複数の宅地建物取引業者が入居者募集業務に関与する場合、宅地建物取引業法が定める報酬額の上限額を当該複数の業者が分配して受領することができる。
③ 報酬とは別に受領することのできる広告料とは、報酬の範囲内で賄うことが相当でない多額の費用を要する特別の広告の料金である。
④ 宅地建物取引業者が入居者募集業務として物件の広告や入居希望者への重要事項説明を行ったにもかかわらず、賃貸借契約の直前に入居希望者が契約を断念した場合、貸主に対し、既に行った広告及び重要事項説明書作成に要した費用を報酬として請求することはできない。
解説
媒介報酬に関する問題です。
それではさっそく選択肢をみていきましょう。
選択肢 ①
居住用建物の賃貸借の媒介報酬は、借主と貸主のそれぞれから賃料の0.5か月分とこれに対する消費税を受け取ることができるのが原則だが、借主及び貸主双方の承諾がある場合には、それぞれから報酬として賃料の1か月分と消費税を受け取ることができる。
×不適切です。
宅建業法が定める報酬額について、まとめシートでは以下の通り解説しています。
宅建業法上の取引が成立した際、成功報酬として支払われる報酬が媒介報酬です。
居住用建物の場合は原則として、貸主と借主の双方から賃料の0.5か月分+税の報酬を受け取ります。
ただし、貸主・借主いずれかの承諾があれば、承諾した一方から賃料の1か月分+税を上限に報酬を受け取ることも可能です。この場合はもう一方から報酬を受領することはできません。
つまり、居住用建物の賃貸借の媒介報酬は、借主と貸主のそれぞれから賃料の0.5か月分とこれに対する消費税を受け取ることができるのが原則ですが、借主及び貸主双方の承諾がある場合には、どちらか一方から報酬として賃料の1か月分と消費税を受け取ることができます。よってこの選択肢は不適切です。
選択肢 ②
複数の宅地建物取引業者が入居者募集業務に関与する場合、宅地建物取引業法が定める報酬額の上限額を当該複数の業者が分配して受領することができる。
〇適切です。
募集業務に複数の宅地建物取引業者が関与する場合でも、全業者の報酬総額は、宅地建物取引業法が定める報酬額の上限額に制限されます。そのため、それぞれの業者は報酬総額を按分して受領することになります。
選択肢の説明通りですので、この選択肢は適切です。
選択肢 ③
報酬とは別に受領することのできる広告料とは、報酬の範囲内で賄うことが相当でない多額の費用を要する特別の広告の料金である。
〇適切です。
原則として、物件の広告費等は報酬に含まれるため、別に請求することはできません。
ただし、依頼者の特別の依頼によって行った広告料金や宣伝費用は別に請求し、受領することも可能とされています。特別な依頼がどの程度のものかは判例によって基準が明らかに示されており、例えば新聞広告や大きな屋外看板など「報酬の範囲内で賄うことが相当でない多額の費用を要する特別の広告の料金」などを意味します。
選択肢の説明通りですので、この選択肢は適切です。
選択肢 ④
宅地建物取引業者が入居者募集業務として物件の広告や入居希望者への重要事項説明を行ったにもかかわらず、賃貸借契約の直前に入居希望者が契約を断念した場合、貸主に対し、既に行った広告及び重要事項説明書作成に要した費用を報酬として請求することはできない。
〇適切です。
宅建業法上の取引が成立した際に、成功報酬として支払われる報酬が媒介報酬です。
賃貸借契約が成立しなかった場合は、報酬を受け取ることはできません。
なお、既に行った広告や重要事項説明書作成費用についても、請求することができません。
選択肢の説明通りですので、この選択肢は適切です。
以上から、正解は選択肢①となります。
媒介報酬に関する問題は、令和2年度以降出題されていませんので、頻出度としてはさほど高いものではないといえます。
ただし、公式テキストにも記載のある事項で、試験範囲内となっておりますので、まとめシートに記載されている基本的な事項を確認していただければと思います。
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