今日は、賃貸不動産経営管理士試験 令和1年度 第22問について解説します。
原状回復における経過年数の考慮に関する次の記述のうち、適切なものの組合せはどれか。
ア ガイドラインによれば、クッションフロアは8年で残存価値1円となるような直線または曲線を想定し、借主の負担を決定する。
イ ガイドラインによれば、借主の過失によって必要となったフローリングの部分補修は、経過年数を考慮することなく借主の負担となる。
ウ ガイドラインによれば、借主が喫煙したことによって必要となったクロスの張替え費用は、経過年数を考慮することなく借主の負担となる。
エ ガイドラインによれば、耐用年数を経過したクロスであっても、使用可能である場合には、借主が行った落書きを消すための費用については、借主の負担となることがある。
1 ア、イ
2 ア、ウ
3 イ、エ
4 ウ、エ
解説
「ガイドライン」とは、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」(国土交通省平成 23 年8月)のことです。
原状回復ガイドラインに関する問題です。
それではさっそく選択肢をみていきましょう。
選択肢 ア
ガイドラインによれば、クッションフロアは8年で残存価値1円となるような直線または曲線を想定し、借主の負担を決定する。
×不適切です。
ガイドラインでは、法人税法などに基づく減価償却資産の考え方や、経過年数による減価割合を参考にして、経過年数と借主の負担割合を決定しています。
具体的には、耐用年数経過時に残存簿価を1円まで償却できるという考え方に基づき、借主の負担を決定する仕組みです。
クッションフロアの法定耐用年数は6年と定められています。
つまり、ガイドラインによれば、クッションフロアは6年で残存価値1円となるような直線または曲線を想定し、借主の負担を決定します。
よってこの選択肢は不適切です。
選択肢 イ
ガイドラインによれば、借主の過失によって必要となったフローリングの部分補修は、経過年数を考慮することなく借主の負担となる。
〇適切です。
フローリングは、将来的に全体を張替えるのが一般的であり、部分補修を行ってもフローリング全体の価値が高まるわけではありません。
したがって、借主がフローリングの部分補修費用を全額負担しても、貸主が利益を得ることにはならないため、経過年数を考慮する必要はないと考えられています。
選択肢の説明通りですので、この選択肢は適切です。
選択肢 ウ
ガイドラインによれば、借主が喫煙したことによって必要となったクロスの張替え費用は、経過年数を考慮することなく借主の負担となる。
×不適切です。
タバコのヤニや臭いは、故意・過失や善管注意義務違反に該当すると判断されるため、借主が毀損部分の補修費用を負担する必要があります。
なお、クロスの耐用年数は6年です。
つまり、ガイドラインによれば、借主が喫煙したことによって必要となったクロスの張替え費用は、6年で残存価値1円となるような直線または曲線を想定し借主の負担を決定します。よってこの選択肢は不適切です。
選択肢 エ
ガイドラインによれば、耐用年数を経過したクロスであっても、使用可能である場合には、借主が行った落書きを消すための費用については、借主の負担となることがある。
〇適切です。
クロスの耐用年数は6年とされており、6年で残存価値1円となるような直線または曲線を想定し、負担割合を算定します。
ただし、クロスに故意に落書きを行った場合は、当該クロスが耐用年数を超えていても、これを消すための費用は借主負担とすることができます。
選択肢の説明通りですので、この選択肢は適切です。
以上から、適切な選択肢はイとエですので、正解は選択肢③となります。
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