今日は、宅地建物取引士試験 令和3年度(12月) 第1問について解説します。

令和2年度と3年度は、新型コロナウイルスの感染拡大防止措置として、受験者分散の目的で10月と12月の2回試験が実施されました。

 

★出題テーマ【権利関係-自力救済】★

令和3年度(12月)宅地建物取引士試験 第1

次の1から4までの記述のうち、民法の規定、判例及び下記判決文によれば、正しいものはどれか。

 

(判決文) 「私力の行使は、原則として法の禁止するところであるが、法律に定める手続によったのでは、権利に対する違法な侵害に対抗して現状を維持することが不可能又は著しく困難であると認められる緊急やむを得ない特別の事情が存する場合においてのみ、その必要の限度を超えない範囲内で、例外的に許されるものと解することを妨げない。」

①  権利に対する違法な侵害に対抗して法律に定める手続によらずに自力救済することは、その必要の限度を超えない範囲内であれば、事情のいかんにかかわらず許される。

 

②  建物賃貸借契約終了後に当該建物内に家財などの残置物がある場合には、賃貸人の権利に対する違法な侵害であり、賃貸人は賃借人の同意の有無にかかわらず、原則として裁判を行わずに当該残置物を建物内から撤去することができる。

 

③  建物賃貸借契約の賃借人が賃料を1年分以上滞納した場合には、賃貸人の権利を著しく侵害するため、原則として裁判を行わずに、賃貸人は賃借人の同意なく当該建物の鍵とシリンダーを交換して建物内に入れないようにすることができる。

 

④  裁判を行っていては権利に対する違法な侵害に対抗して現状を維持することが不可能又は著しく困難であると認められる緊急やむを得ない特別の事情が存する場合には、その必要の限度を超えない範囲内で例外的に私力の行使が許される。

 

 

 

解説

自力救済に関する問題です。

 

判決文には、私力の行使(自力救済)は原則として認められないとされていますが、一定の条件下では例外的に許容される場合があると明記されています。

 

それではさっそく選択肢をみていきましょう。

 


選択肢 ①

権利に対する違法な侵害に対抗して法律に定める手続によらずに自力救済することは、その必要の限度を超えない範囲内であれば、事情のいかんにかかわらず許される

 

×不適切です。

自力救済することは、原則として禁止されており、判決文にも明記されている通り「緊急やむを得ない特別の事情が存する場合においてのみ」例外的に許されます。

つまり、権利に対する違法な侵害に対抗して法律に定める手続によらずに自力救済することは、その必要の限度を超えない範囲内であっても、緊急やむを得ない特別の事情がない限りは許されません。よってこの選択肢は不適切です。

 


選択肢 ②

建物賃貸借契約終了後に当該建物内に家財などの残置物がある場合には、賃貸人の権利に対する違法な侵害であり、賃貸人は賃借人の同意の有無にかかわらず、原則として裁判を行わずに当該残置物を建物内から撤去することができる

 

×不適切です。

家財などの残置物の所有者である借主の同意がないにもかかわらず、法的な手続きをとることなく、残置物を貸主が処分することは自力救済にあたります。

残置物による権利侵害があったとしても、これを緊急やむを得ない特別の事情とまでは言えませんので、貸主は裁判を行わずに残置物を撤去することはできません。

つまり、建物賃貸借契約終了後に当該建物内に家財などの残置物がある場合には、賃貸人の権利に対する違法な侵害であるといえますが、賃貸人は賃借人の同意がない場合、原則として裁判を行わずに当該残置物を建物内から撤去することができません。よってこの選択肢は不適切です。

 


選択肢 ③

建物賃貸借契約の賃借人が賃料を1年分以上滞納した場合には、賃貸人の権利を著しく侵害するため、原則として裁判を行わずに、賃貸人は賃借人の同意なく当該建物の鍵とシリンダーを交換して建物内に入れないようにすることができる

 

×不適切です。

賃料を、1年以上という長期にわたって滞納しているという事実は、貸主の権利を著しく侵害しているとも言えます。ただし、緊急やむを得ない特別な事情とまでは認められません。

また、建物の鍵とシリンダーを勝手に交換して借主が建物に入れないようにする行為は、判決文に明記されている「必要の限度を超えない範囲内」というのも超えており、不適切です。

つまり、建物賃貸借契約の賃借人が賃料を1年分以上滞納した場合には、賃貸人の権利の著しい侵害に相当することはありますが、裁判を行わずに、賃貸人は賃借人の同意なく当該建物の鍵とシリンダーを交換して建物内に入れないようにすることはできません。よってこの選択肢は不適切です。

 


選択肢 ④

裁判を行っていては権利に対する違法な侵害に対抗して現状を維持することが不可能又は著しく困難であると認められる緊急やむを得ない特別の事情が存する場合には、その必要の限度を超えない範囲内で例外的に私力の行使が許される。

 

〇適切です。

緊急やむを得ない特別な事情がある場合には、必要の限度を超えない範囲内であれば、例外的に私力の行使が許されます。

判決文の内容と合致しています。

選択肢の説明通りですので、この選択肢は適切です。

 


 

以上から、正解は選択肢④となります。

 

 

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