今日は、令和5年度 第5問について解説します。
賃貸住宅管理業者であるAと賃貸人Bとの間の管理受託契約における、家賃等の金銭管理を行う業務についての次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
①AはBの指揮命令に従い金銭管理を行う必要がある。
②Aは金銭管理を行う際、自らの財産を管理するのと同程度の注意をもって行う必要がある。
③Aが自己の財産と区別して管理しているBの金銭に利息が生じた際、この利息を除いた額をBに引き渡すことができる。
④Aは、Bの承諾があれば、金銭管理を行う業務を第三者に再委託することができる。
解説
管理受託契約における、金銭管理業務に関する問題です。また、管理受託契約は民法上どういった契約となっているのか、という知識にも関係してくる問題です。
それではさっそく選択肢をみていきましょう。
選択肢①
AはBの指揮命令に従い金銭管理を行う必要がある。
×不適切です。
Aは貸主Bからの委託をうけて管理業務を行いますが、Aは賃貸住宅管理業者なので、信義を旨とし誠実にその業務を行わなければならず、賃貸住宅管理業法に基づき適正に業務を運営する必要があります。金銭管理業務についても、賃貸住宅管理業法の定めのとおり、行う必要があります。
つまり、AはBの委託により、賃貸住宅管理業法の定めにのっとった方法で金銭管理を行う必要があります。よってこの選択肢は不適切です。
選択肢②
Aは金銭管理を行う際、自らの財産を管理するのと同程度の注意をもって行う必要がある。
×不適切です。
管理業者Aは管理受託契約に基づき金銭管理業務を行いますが、管理受託契約は、民法上の委任に該当するため、受任者であるAは、以下のような義務が生じます。
受任者であるAは、「善管注意義務」といって、委任された事務の処理に関して、自分の財産を管理するのと同等では足りず、善良な管理者の注意をもって管理することが求められます。
つまり、Aは金銭管理を行う際、自らの財産を管理するのと同程度の注意をもって行うだけでは足りず、善良な管理者の注意をもって行う必要があります。よってこの選択肢は不適切です。
選択肢③
Aが自己の財産と区別して管理しているBの金銭に利息が生じた際、この利息を除いた額をBに引き渡すことができる。
×不適切です。
もう一度、まとめシートの解説を確認してみましょう。
受任者であるAには、「受取物の引渡し義務」があり、委任事務を処理する過程で受け取った金銭その他の物を委任者であるBに引き渡す義務があります。金銭の場合、利子が生じることもありますが、その場合は利子も引き渡さなければなりません。
つまり、Aが自己の財産と区別して管理しているBの金銭に利息が生じた際、この利息分もBに引き渡さなくてはいけません。よってこの選択肢は不適切です。
選択肢④
Aは、Bの承諾があれば、金銭管理を行う業務を第三者に再委託することができる。
〇適切です。
もう一度、まとめシートの解説を確認してみましょう。
受任者であるAには、「自己執行義務」があり、原則として自分で委任事務を処理しなければいけませんが、あらかじめ受任者の承諾を得ていれば、他の人に任せることもできます。
よってこの選択肢は適切です。
なお、賃貸住宅管理業法上でも、管理業務の再委託に関する定めがあり、管理業務全部を他の者に再委託することは禁止されています。(第15条)
以上から、正解は選択肢④となります。
ぜひ関連解説も確認しながら、理解を深めていただければと思います。
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