今日は、令和5年度 第35問について解説します。
賃貸住宅管理業法に定める不当勧誘行為等の禁止に関する次の記述のうち、不適切なものはどれか。
① 賃貸人から特定賃貸借契約の解除の申出があったため、翻意を促そうと賃貸人宅を訪れたところ、賃貸人から面会を拒否されたので、「なぜ会わないのか」と声を荒げて面会を強要する行為は、禁止される。
② 特定転貸事業者の担当者が、特定賃貸借契約の相手方となろうとする者に対し、賃貸人からいつでも中途解約できると誤って告知した場合は、不当勧誘行為には該当しない。
③ 特定転貸事業者が、特定賃貸借契約の相手方になろうとする者に対し、維持保全に係る賃貸人の費用負担があるにもかかわらず、あえて負担なしと告知した場合、その者との間で実際に特定賃貸借契約が締結されなくとも、不当勧誘行為に該当する。
④ 不動産業者が、賃貸住宅用の土地の購入の勧誘とともに特定賃貸借契約の勧誘を行う場合には、土地の購入の勧誘を行う時点において、特定賃貸借契約のリスクを含めた事実を告知する必要がある。
解説
不当な勧誘等の禁止に関する問題です。
それではさっそく選択肢をみていきましょう。
選択肢 ①
賃貸人から特定賃貸借契約の解除の申出があったため、翻意を促そうと賃貸人宅を訪れたところ、賃貸人から面会を拒否されたので、「なぜ会わないのか」と声を荒げて面会を強要する行為は、禁止される。
〇適切です。
声を荒げて面会を強要する行為は「威迫」にあたり、賃貸住宅管理業法において禁止される「不当な勧誘等」に該当する行為の1つです。
よってこの選択肢は適切です。
また、この選択肢では明らかに威迫行為であることが読み取れますが、「特定賃貸借契約の解除の申出があった」という状況ですので、面会を拒絶されて、もし声を荒げて面会を強要することがなかったとしても、引き続き執拗に翻意を促そうとするような場合は、禁止される「執拗な勧誘」にあたることもあります。
一度断られても、あきらめず何度も粘り強く交渉しました!
なんて言うと一見イイ話風ですが、賃貸住宅管理業法上では、執拗な勧誘に該当する可能性がありますね。
選択肢 ②
特定転貸事業者の担当者が、特定賃貸借契約の相手方となろうとする者に対し、賃貸人からいつでも中途解約できると誤って告知した場合は、不当勧誘行為には該当しない。
×不適切です。
事実とは異なるとはいえ、誤って告知したのですから、担当者の故意ではなさそうですね。
ではこれは不当な勧誘等に該当しないのでしょうか?
賃貸住宅管理業法において禁止される「故意に事実を告げない、または故意に不実のことを告げる」行為に関して、まとめシートでは以下の通り解説しています。
「故意」かどうかは、客観的事実によって判断されます。特定転貸事業者であれば当然に知っていると思われる事実を告げない場合なども故意と推認されます。
この選択肢において、「賃貸人からいつでも中途解約できる」というのは誤りであることは、特定転貸事業者であれば当然知っていると思われる事実です。なぜなら、借地借家法の規制により、貸主から解約を申入れる場合には正当事由が必要ですし、申入れから解約に至るまでの期間が定められている契約形態もありますので、「いつでも中途解約できる」などということは事実と異なるからです。
つまり、特定転貸事業者の担当者が、特定賃貸借契約の相手方となろうとする者に対し、賃貸人からいつでも中途解約できると誤って告知した場合、特定転貸事業者であれば当然知っているはずの事実について、不実のことを告げていると推認されますので、不当勧誘行為は該当します。よってこの選択肢は不適切です。
選択肢 ③
特定転貸事業者が、特定賃貸借契約の相手方になろうとする者に対し、維持保全に係る賃貸人の費用負担があるにもかかわらず、あえて負担なしと告知した場合、その者との間で実際に特定賃貸借契約が締結されなくとも、不当勧誘行為に該当する。
〇適切です。
故意に不実のことを告げる行為は、賃貸住宅管理業法において禁止される「不当な勧誘等」に該当する行為の1つです。
なお、まとめシートで解説している通り、
不当な勧誘等は、実際に契約が締結されたかどうかや、契約解除が妨げられたかどうかは問わず、行為自体を禁止するものです。
ですので選択肢の説明通り、維持保全に係る賃貸人の費用負担があるにもかかわらず、あえて負担なしと告知した場合、その者との間で実際に特定賃貸借契約が締結されなくても、不当勧誘行為に該当しますので、この選択肢は適切です。
選択肢 ④
不動産業者が、賃貸住宅用の土地の購入の勧誘とともに特定賃貸借契約の勧誘を行う場合には、土地の購入の勧誘を行う時点において、特定賃貸借契約のリスクを含めた事実を告知する必要がある。
〇適切です。
土地を購入する際に特定賃貸借契約の勧誘を行う場合、特定賃貸借契約の締結を前提に土地の購入を検討するというケースが考えられます。そのため、建設業者や不動産業者が、賃貸住宅の建設や土地等の購入等を勧誘する際に特定賃貸借契約の勧誘
を行う場合には、特定賃貸借契約のリスクを含めた事実を告知し、勧誘時点でオーナーとなろうとする者が特定賃貸借契約のリスクを十分に認識できるようにすることとされています。(国土交通省 サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン より)よってこの選択肢は適切です。
なお、具体的な事実告知の方法としては、重要事項説明の際に使用する特定賃貸借契約を締結する上でのリスク事項を記載した書面を交付して説明することが望ましいとされています。
以上から、正解は選択肢②となります。
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