今日は、令和5年度 第26問について解説します。

令和5年度賃貸不動産経営管理士試験 第26

AがBに対して賃貸住宅(以下、「甲住宅」という。)を賃貸し、Bが居住している場合に関する以下の記述のうち、正しいものはいくつあるか。

 

ア  Aが甲住宅をCに売却しようとする場合、Bの承諾がなくとも売却することはできる。

イ  Aが甲住宅をCに売却しようとする場合、Aは、Bの承諾がなければ、AC間の合意で賃貸人の地位を移転させることはできない。

ウ  Aが融資を受けて甲住宅を建築し、同建物及び敷地に、借入金を被担保債権とする抵当権が設定され、登記されている場合において、抵当権が実行され、Cが甲住宅を買受けた場合、抵当権設定登記後に甲住宅に入居したBはCの買受時から3か月以内に甲住宅を明渡す必要がある。

エ  BがAの同意を得て、賃借権をDに譲渡した場合、敷金に関するBの権利義務関係はDに承継される。

 

1  1つ

2  2つ

3  3つ

4  4つ

 

 

解説

賃貸住宅の貸主の変更や賃借権に関する問題です。

 

それではさっそく選択肢をみていきましょう。


 

選択肢 ア

Aが甲住宅をCに売却しようとする場合、Bの承諾がなくとも売却することはできる。

 

〇適切です。

賃貸住宅は、所有者が変わること、いわゆる「オーナチェンジ」も珍しいことではありません。

賃貸住宅を譲渡する際に、入居者の承諾は不要です。

選択肢の説明通りですので、この選択肢は適切です。


 

選択肢 イ

Aが甲住宅をCに売却しようとする場合、Aは、Bの承諾がなければ、AC間の合意で賃貸人の地位を移転させることはできない

 

×不適切です。

借主へ賃貸物件の引渡しが完了しているときに、所有者が変わった場合は、貸主の地位も新しい所有者に当然に移転します。

なお、貸主の地位を前の貸主に留保した場合についてはその限りではありませんが、選択肢の場合は旧所有者Aと新所有者Cの間で貸主の地位が移転することを合意していますね。また、貸主の地位の移転に関して、借主の承諾が必要なものではありません。

つまり、Aが甲住宅をCに売却しようとする場合、AC間の合意で賃貸人の地位を移転させることができますなお、Bの承諾は必要ありません。


 

選択肢 ウ

Aが融資を受けて甲住宅を建築し、同建物及び敷地に、借入金を被担保債権とする抵当権が設定され、登記されている場合において、抵当権が実行され、Cが甲住宅を買受けた場合、抵当権設定登記後に甲住宅に入居したBはCの買受時から3か月以内に甲住宅を明渡す必要がある

 

×不適切です。

賃借権の対抗要件について、まとめシートでは以下の通り解説しています。

賃借権の対抗要件を備えるためには、賃借権を登記することや、建物の引渡しがなされている必要があります。

対抗要件は先に備えたほうが優先されますが、この選択肢の場合、借主Bは建物の抵当権登記後に入居しているため、Bの賃借権よりも抵当権が優先されます。

抵当権が実行されて競売にかけられ、新しい所有者Cが買い受けた場合において、CがBに対して明け渡しを求めた場合は拒むことができません。

ただし、借主Bが抵当権の実行(競売開始)の前から入居している場合には、建物の引渡し猶予期間制度を使えます。建物の引渡し猶予は、買い受けの時から6か月とされていますので、借主Bは、新しい所有者Cが買い受けたときから6か月は引渡しが猶予されます。

つまり、Aが融資を受けて甲住宅を建築し、同建物及び敷地に、借入金を被担保債権とする抵当権が設定され、登記されている場合において、抵当権が実行され、Cが甲住宅を買受けた場合、抵当権設定登記後に甲住宅に入居したBは競売開始前から入居していた場合、Cから明渡しを求められた時にはCの買受時から6か月以内に甲住宅を明渡す必要があります。よってこの選択肢は不適切です。


 

選択肢 エ

BがAの同意を得て、賃借権をDに譲渡した場合、敷金に関するBの権利義務関係はDに承継される

 

×不適切です。

敷金の承継について、まとめシートでは以下の通り解説しています。

賃借権が譲渡された場合は、敷金に関する権利義務については新借主に承継されません。原則として貸主Aは、旧借主Bの敷金返還請求に応じる必要がありますし、新貸主Dは貸主Aと新たな敷金契約を結んで敷金を預け入れるということになるでしょう。

つまり、BがAの同意を得て、賃借権をDに譲渡した場合、敷金に関するBの権利義務関係はDに承継されません。よってこの選択肢は不適切です。

 


 

以上から、適切な選択肢はア1つだけですので、正解は選択肢①となります。

 

貸主が変わったり、借主が変わったりするような場合、賃貸借契約にかかわる権利義務がどのようになるのか、ということをひととおりおさえておく必要がありますね。

 

まとめシートではちょっと難しい権利義務関係についても、記憶に残るイラストでやさしく解説しています。

ここから立ち読みできますので、ぜひ試してみてくださいね。

 

 

 

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