今日は、令和5年度 第25問について解説します。

令和5年度賃貸不動産経営管理士試験 第25

令和3年4月1日に締結された賃貸借契約の終了に関する次の記述のうち、適切なものの組合せはどれか。

 

ア 賃貸人と賃借人に紛争があり、賃借人があらかじめ賃料の支払を拒絶する意思を書面にて明らかにしており、実際に賃料の滞納が3か月に及ぶ場合、賃貸人は催告することなく賃貸借契約を解除することができる。

イ 賃料支払義務は賃借人の中核的義務である以上、1回でも賃料不払があれば、賃貸人との間の信頼関係が破壊されたとして、賃貸人は賃貸借契約を解除することができる。

ウ 賃貸借契約が解除されると、解除の遡及効により契約当初に遡り解除の効果が生ずる。

エ 家賃債務保証業者が連帯保証人となっている場合において、当該業者が賃借人による賃料不払に関して保証債務を履行していても、信頼関係が破壊されたとして、賃貸人による賃貸借契約の解除が認められる場合がある。

 

1 ア、イ

2 イ、ウ

3 ウ、エ

4 ア、エ

 

 

解説

賃貸借契約の解除に関する問題です。

問題文の冒頭に「令和3年4月1日に締結された」という前置きがあるのは、令和2年(2020年)4月1日に施行された改正民法の規定が適用される契約であるということを意味していると考えられます。

基本的には、本試験で問われることは現行の法規制についてですので、最新のテキストで学習した内容に基づいて解答を導けば、「何年にどんな改定があったか」というところまでの知識がなくても対応できると考えられますので、急にわからない年月日が出てきても、焦る必要はありませんよ。

 

それでは選択肢をみていきましょう。


選択肢 ア

賃貸人と賃借人に紛争があり、賃借人があらかじめ賃料の支払を拒絶する意思を書面にて明らかにしており、実際に賃料の滞納が3か月に及ぶ場合、賃貸人は催告することなく賃貸借契約を解除することができる。

 

〇適切です。

債務不履行による契約解除について、まとめシートでは以下の通り解説しています。

借主が賃料を支払わないというような債務不履行があった場合、貸主はそれを理由に賃貸借契約を解除することができます。

一般的には賃料を2~3か月分払わない場合は、貸主と借主の信頼関係を破壊されたと判断されるものであるといえますので、滞納が3カ月に及んでいるという事実は、契約解除の原因となり得ます。

なお、原則、契約解除をしようとするときは相当期間を定めて催告をする必要がありますが、債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確にしたときは、催告をすることなく直ちに契約を解除することができます(民法第542条)。

よってこの選択肢は適切です。


 

選択肢 イ

賃料支払義務は賃借人の中核的義務である以上、1回でも賃料不払があれば、賃貸人との間の信頼関係が破壊されたとして、賃貸人は賃貸借契約を解除することができる

 

×不適切です。

賃賃料支払い義務は、借主の義務の中でも重要なものですので、賃料を支払わないことは契約解除の事由になります。ただし、解除するには、それによって貸主と借主の信頼関係が破壊されたかどうかの判断が必要となります。さすがに1回賃料を支払わなかったという事実だけでは、信頼関係が破壊されたとまでは言えないため、それだけでは賃貸借契約を解除することはできません。

つまり、賃料支払義務は賃借人の中核的義務ですが、1回賃料不払があっただけでは、賃貸人との間の信頼関係が破壊されたとして、賃貸人は賃貸借契約を解除することができません。よってこの選択肢は不適切です。


 

選択肢 ウ

賃貸借契約が解除されると、解除の遡及効により契約当初に遡り解除の効果が生ずる。

 

×不適切です。

「遡及効(そきゅうこう)」とは、過去にさかのぼって法的な効果が生じることです。賃貸借契約の場合、継続的な関係があるため、契約解除をした場合には、将来に向かってのみ、その効力が生じます(民法第620条)。

つまり、賃貸借契約が解除されると、解除の遡及効はなく、未来に向かってのみ解除の効果が生じます。よってこの選択肢は不適切です。


 

選択肢 エ

家賃債務保証業者が連帯保証人となっている場合において、当該業者が賃借人による賃料不払に関して保証債務を履行していても、信頼関係が破壊されたとして、賃貸人による賃貸借契約の解除が認められる場合がある。

 

〇適切です。

最近は、賃貸借契約の際に連帯保証人を親や親族に頼むのではなく、家賃債務保証業者との間で保証契約を締結するケースが多く採用されています。借主が家賃を滞納した場合などに、借主に代わって賃料を立て替えて支払うものですが、貸主に家賃債務保証業者から家賃が支払われたとしても、借主が賃料を滞納しているという事実は変わらないため、信頼関係破壊につながる可能性があります。よってこの選択肢は適切です。


 

以上から、適切な選択肢はアとエですので、正解は選択肢④となります。

 

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★関連知識に関して★

選択肢エの解説にも記載しましたが、家賃債務保証業者のサービスを活用するケースが一般的になっています。

家賃債務保証業者に関して注目されているのが、借主が賃料を滞納した場合に、催告なしで賃貸借契約を解除する権限、および物件の明渡しがあったものとみなす権限を家賃債務保証業者に付与するという、いわゆる「追い出し条項」といわれる特約について、令和4年12月12日に最高裁にて、無効であるとの判決が出たことです。これは、消費者である借主の利益を一方的に害する特約であるため、消費者契約法に違反しているという判断に基づく判決です。

 

賃貸不動産経営管理士本試験では、昨今の情勢をふまえた問題が出題されることがありますので、ぜひ普段から情報収集のアンテナをはって、関連知識についても理解を深めていただければと思います。

 

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