今日は、令和3年度 第7問について解説します。
賃貸住宅等の管理と自然災害に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
① 賃貸借契約締結時には、借主に対し、地方公共団体が作成した水害ハザードマップ等に記載された避難所の位置について示すことが望ましい。
② ブロック塀の耐震診断や除去・改修等を行う場合、地方公共団体が設ける助成金制度の活用を検討することが望ましい。
③ 震災等の不可抗力による賃貸住宅の損傷の修繕費用は借主が負担すべきものではない。
④ 震災等の不可抗力により賃貸住宅の設備の一部が損傷した場合、貸主はその修繕を拒むことができる。
解説
自然災害および修繕費用に関する問題です。
それではさっそく選択肢をみていきましょう。
選択肢①
賃貸借契約締結時には、借主に対し、地方公共団体が作成した水害ハザードマップ等に記載された避難所の位置について示すことが望ましい。
〇適切です。
宅建業者が媒介して賃貸借契約を締結する場合、宅建業法に基づく重要事項説明をしますが、水害ハザードマップにおける建物の所在地について説明することが義務付けられています。なお、水害ハザードマップは入手可能な最新のものを使い、ハザードマップ上に記載された避難所についてもその位置を示すことが望ましいとされています。
よってこの選択肢は適切です。
選択肢②
ブロック塀の耐震診断や除去・改修等を行う場合、地方公共団体が設ける助成金制度の活用を検討することが望ましい。
〇適切です。
塀の安全対策については、国や地方自治体でも取り組みをすすめており、地域によっては耐震診断、除却、改修等に助成金制度を設けている場合があります。助成金制度を活用できれば、賃貸住宅経営の収支上も助かりますから、ぜひ検討したいものですね。
よってこの選択肢は適切です。
調査方法としては、市区町村役場等に問い合わせるほか、自治体のHPで公表している場合もあるので、
「〇〇市(物件の所在地)+ブロック塀」というキーワードで検索してみると良いですね。
選択肢③
震災等の不可抗力による賃貸住宅の損傷の修繕費用は借主が負担すべきものではない。
〇適切です。
修繕費用の負担について、まとめシートでは以下の通り解説しています。
貸主は、借主に対して建物を使用収益できる状態に維持する義務を負っており、その費用は原則として貸主が負担することとなっています。そのため、地震などの不可抗力により建物が損傷した場合は、貸主が修繕およびその費用を負担する義務があります。
よってこの選択肢は適切です。
選択肢④
震災等の不可抗力により賃貸住宅の設備の一部が損傷した場合、貸主はその修繕を拒むことができる。
×不適切です。
貸主が負う目的物の修繕義務について、まとめシートでは以下の通り解説しています。
貸主は、借主に対して建物を使用収益できる状態に維持する義務を負っています。天変地異等の不可抗力により建物に損傷等が生じた場合にも、修繕義務を負うものとされています。なお、修繕義務は専用部分に限らず、賃貸住宅の使用に必要な共用部分についても生じます。
つまり、震災等の不可抗力により賃貸住宅の設備の一部が損傷した場合、貸主はその修繕を拒むことができません。よってこの選択肢は不適切です。
以上から、正解は選択肢④となります。
選択肢①は、宅建業法上の解釈、運用の考え方に基づくものですので、少し悩んでしまったという方もいるかもしれません。
実はこの、水害ハザードマップにおける対象物件の説明が義務化されたのは、2020年のことでした。(参考記事はこちらからどうぞ)
この過去問は令和3年、2021年のものですので、義務化された翌年に問題として採用されたということになります。
本試験では、このように新制度や法改正に関する問題が出題されることがしばしばあります。
ニュースや業界で話題になっていることにも、アンテナを張っておくとよさそうですね。
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