今日は、賃貸不動産経営管理士試験 令和2年度 第35問について解説します。
賃料の増減額請求に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
① 普通建物賃貸借契約の約定に「賃料の増減は協議による」との記載があった場合、協議を経なければ、貸主は借主に対し、借地借家法上の賃料増額請求をすることはできない。
② 貸主が賃料の増額を請求し借主がこれを拒んだが、貸主の請求を認めた裁判が確定した場合、借主が賃料の不足額を支払うにあたり、特約がないときは、年1割の割合による支払期後の利息を付加しなければならない。
③ 定期建物賃貸借契約の締結にあたり、「契約期間中に如何なる理由が生じても賃料の減額はできないものとする」といった特約は無効である。
④ 借主が賃料の減額を請求し貸主がこれを拒んだが、借主の請求を認めた裁判が確定した場合、貸主が受け取った賃料の過払額を返還するにあたり、民法の定める法定利率による利息を付加しなければならない。
解説
賃料の増減額請求に関する問題です。
それではさっそく選択肢をみていきましょう。
選択肢 ①
普通建物賃貸借契約の約定に「賃料の増減は協議による」との記載があった場合、協議を経なければ、貸主は借主に対し、借地借家法上の賃料増額請求をすることはできない。
×不適切です。
不賃料の増減額について、期間の経過や一定の基準に従って賃料の改定をする旨の自動改定特約がある場合や、増減は協議によるという約定がある場合でも、協議を経ずに請求することができます。
つまり、普通建物賃貸借契約の約定に「賃料の増減は協議による」との記載があった場合であっても、協議を経ずに、貸主は借主に対し、借地借家法上の賃料増額請求をすることができます。よってこの選択肢は不適切です。
選択肢 ②
貸主が賃料の増額を請求し借主がこれを拒んだが、貸主の請求を認めた裁判が確定した場合、借主が賃料の不足額を支払うにあたり、特約がないときは、年1割の割合による支払期後の利息を付加しなければならない。
〇適切です。
貸主が賃料の増額を請求したものの、借主がこれを拒み合意に至らない場合には、まず調停の申し立てを行います(調停前置主義)。調停でも解決しない場合には、裁判所の判断を求めることとなります。
この場合、裁判が確定するまでの間、借主は相当と認める額の賃料を支払えばよいとされています。しかし、賃料増額を認める裁判が確定したときは、不足分について年1割の割合による利息を付加して貸主に支払う必要があります。
選択肢の説明通りですので、この選択肢は適切です。
選択肢 ③
定期建物賃貸借契約の締結にあたり、「契約期間中に如何なる理由が生じても賃料の減額はできないものとする」といった特約は無効である。
×不適切です。
定期建物賃貸借契約の場合、借主による賃料減額請求権を排除する特約は有効とされています。
「如何なる理由が生じても賃料の減額はできない」いう書き方はやや強く感じられますが、この表現が特約の有効性に影響を与えることはありません。この特約は適法であり有効です。
つまり、定期建物賃貸借契約の締結にあたり、「契約期間中に如何なる理由が生じても賃料の減額はできないものとする」といった特約は有効です。よってこの選択肢は不適切です。
なお、普通建物賃貸借契約の場合は、賃料減額請求を排除する特約を設けたとしても無効となる点に注意が必要です。
定期建物賃貸借契約と普通建物賃貸借契約の違いを押さえていただければと思います。
選択肢 ④
借主が賃料の減額を請求し貸主がこれを拒んだが、借主の請求を認めた裁判が確定した場合、貸主が受け取った賃料の過払額を返還するにあたり、民法の定める法定利率による利息を付加しなければならない。
×不適切です。
この選択肢は、借主が賃料の減額を請求したものの、貸主がこれを拒み合意に至らない場合の扱いに関するものです。
選択肢②で解説した内容と同様に、調停前置主義のため、まずは調停の申し立てが必要です。調停でも解決しない場合には、裁判所に判断を求めることができます。
裁判が確定するまでの間、貸主は相当と求める額の賃料の支払いを請求することが可能です。しかし、賃料減額を認める裁判が確定したときは、貸主は過払額について年1割の割合による利息を付加して借主に返還する必要があります。
つまり、借主が賃料の減額を請求し貸主がこれを拒んだが、借主の請求を認めた裁判が確定した場合、貸主が受け取った賃料の過払額を返還するにあたり、年1割の割合による利息を付加しなければなりません。よってこの選択肢は不適切です。
以上から、正解は選択肢②となります。
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