今日は、賃貸不動産経営管理士試験 令和2年度 第27問について解説します。
抵当権が設定されている建物の抵当権が実行された場合の、建物賃貸借に関する次の記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
ア 競売で買受人が建物を競落した場合、抵当権の実行前に賃貸借契約が締結され引渡しを受けていれば、賃借人は買受人に賃借権を対抗することができる。
イ 競売で建物を競落した買受人に賃借権を対抗できる場合、賃借人は、買受けの時から6か月を経過するまでは、建物の明渡しを猶予される。
ウ 競落した建物に、買受人に賃借権を対抗できない建物使用者がある場合、買受人は、建物使用者に対して、買受けの時より後に建物の使用をしたことの対価を請求できる。
1 なし
2 1つ
3 2つ
4 3つ
解説
抵当権の実行後における権利関係に関する問題です。
それではさっそく選択肢をみていきましょう。
選択肢 ア
競売で買受人が建物を競落した場合、抵当権の実行前に賃貸借契約が締結され引渡しを受けていれば、賃借人は買受人に賃借権を対抗することができる。
×不適切です。
賃借権の対抗要件を備えるためには、賃借権を登記することや、建物の引渡しがなされている必要があります。
対抗要件は先に備えたほうが優先されますが、この選択肢の場合、借主は建物の抵当権登記後に引渡しを受けているため、賃借権よりも抵当権が優先されることになります。
つまり、競売で買受人が建物を競落した場合、抵当権の設定前に賃貸借契約が締結され引渡しを受けていれば、賃借人は買受人に賃借権を対抗することができます。よってこの選択肢は不適切です。
選択肢 イ
競売で建物を競落した買受人に賃借権を対抗できる場合、賃借人は、買受けの時から6か月を経過するまでは、建物の明渡しを猶予される。
×不適切です。
買受人に賃借権を対抗できる場合には、借主は建物を明け渡す義務はありません。この場合買受け人は、貸主の地位を承継することになります。
一方で、買受け人に賃借権を対抗できない場合には、建物を明け渡す義務があり、このとき借主は買受けの時から6か月を経過するまでは建物の明渡しを猶予されます。
つまり、競売で建物を競落した買受人に賃借権を対抗できない場合、賃借人は、買受けの時から6か月を経過するまでは、建物の明渡しを猶予されます。
よってこの選択肢は不適切です。
選択肢 ウ
競落した建物に、買受人に賃借権を対抗できない建物使用者がある場合、買受人は、建物使用者に対して、買受けの時より後に建物の使用をしたことの対価を請求できる。
〇適切です。
買受け人は、賃借権を対抗できない建物使用者に対して、買受けの時より後に建物の使用をしたことの対価を請求することができます。
なお選択肢イで解説している通り、賃借権を対抗できない借主は、建物を明け渡す義務があり、借主は買受けの時から6か月を経過するまでは建物の明渡しを猶予されますが、明渡しを猶予されている期間も、建物を使用したことの対価の支払いを拒むことはできません。
選択肢の説明通りですので、この選択肢は適切です。
以上から、誤っている選択肢はア、イ、の2つですので、正解は選択肢③となります。
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