今日は、賃貸不動産経営管理士試験 令和2年度 第24問について解説します。
貸主が、借主の賃料不払を理由として建物賃貸借契約を解除する場合に関する次の記述のうち、誤っているものの組合せはどれか。ただし、それぞれの選択肢に記載のない事実及び特約はないものとする。
ア 賃料の支払を1か月でも滞納すれば貸主が催告を経ずに賃貸借契約を解除できるという特約を定めた場合、11月分までの賃料に滞納はなかったが、11月末日が支払期限である12月分の賃料が支払われなかったときは、12月1日に貸主が行った解除通知は有効である。
イ 借主に対して解除を通知した上で建物明渡請求訴訟を提起した貸主は、賃料の不払につき借主に故意過失があったことについては立証する必要はない。
ウ 賃料不払のため契約を解除すると口頭で伝えられた借主が、通知を書面で受け取っていないので解除は無効であると反論したが、このような反論は解除の効力に関係がない。
エ 賃料が3か月間滞納されていることを理由に契約を解除するとの通知書を受け取った借主が、それまで一度も滞納賃料の催告を受けたことがないので解除は無効であると反論したが、このような反論は解除の効力に関係がない。
1 ア、エ
2 イ、ウ
3 ウ、エ
4 ア、イ
解説
賃貸借契約の解除に関する問題です。
それではさっそく選択肢をみていきましょう。
選択肢 ア
賃料の支払を1か月でも滞納すれば貸主が催告を経ずに賃貸借契約を解除できるという特約を定めた場合、11月分までの賃料に滞納はなかったが、11月末日が支払期限である12月分の賃料が支払われなかったときは、12月1日に貸主が行った解除通知は有効である。
×不適切です。
賃貸借契約を解除する場合、原則として、債務不履行に対し催告を行うことが求められます。
判例によると、賃料を1か月でも滞納した場合に無催告で賃貸借契約を解除できるという特約は、賃料が期日に支払われずに解除するにあたり、催告をしなくてもあながち不合理ではないという特別な事情がある場合にのみ有効とされています。
催告をしなくてもあながち不合理ではないという事情としては、例えば長期に渡って賃料の不払いが続いているなど、信頼関係が完全に破壊された状況が考えられます。
この選択肢の場合は、それまでの賃料に滞納がなく、信頼関係が崩れていないと推察されるため、無催告は不合理と判断される可能性が高いです。そのため、解除通知は無効となる可能性が高いでしょう。
つまり、賃料の支払を1か月でも滞納すれば貸主が催告を経ずに賃貸借契約を解除できるという特約を定めた場合、11月分までの賃料に滞納はなかったが、11月末日が支払期限である12月分の賃料が支払われなかったときは、12月1日に貸主が行った解除通知は無効となる可能性が高いです。(催告をしなくてもあながち不合理ではない事情がないと考えられるからです。)よってこの選択肢は不適切です。
選択肢 イ
借主に対して解除を通知した上で建物明渡請求訴訟を提起した貸主は、賃料の不払につき借主に故意過失があったことについては立証する必要はない。
〇適切です。
解約を解除して明渡しを求める際には、賃料不払い自体が解除の根拠となるため、賃料不払いについての借主の過失故意の立証は必要とされません。
選択肢の説明通りですので、この選択肢は適切です。
選択肢 ウ
賃料不払のため契約を解除すると口頭で伝えられた借主が、通知を書面で受け取っていないので解除は無効であると反論したが、このような反論は解除の効力に関係がない。
〇適切です。
解除の通知は書面でなくとも、口頭で行った場合でも効果を持ちます。
書面による通知がないからといって解除が無効になるわけではありません。
選択肢の説明通りですので、この選択肢は適切です。
ただし、法律上は口頭でも成立するとはいえ、実務上は解除の意思表示を確実に証明するため、配達証明付内容証明郵便などを用いた書面での通知が一般的です。
選択肢 エ
賃料が3か月間滞納されていることを理由に契約を解除するとの通知書を受け取った借主が、それまで一度も滞納賃料の催告を受けたことがないので解除は無効であると反論したが、このような反論は解除の効力に関係がない。
×不適切です。
一般的には、3か月の家賃滞納を理由に契約解除を主張することは可能です。
ただし選択肢アでも解説したとおり、賃貸借契約を解除する場合、原則として、債務不履行に対し催告を行うことが求められます。
したがって、借主がそれまで一度も催告を受けていないから解除が無効だという反論は、解除の効力の有無を争ううえで関係があります。
つまり、賃料が3か月間滞納されていることを理由に契約を解除するとの通知書を受け取った借主が、それまで一度も滞納賃料の催告を受けたことがないので解除は無効であると反論した場合、このような反論は解除の効力に関係があります。(原則として解除を行う前に催告が必要です。)よってこの選択肢は不適切です。
以上から、誤っている選択肢はアとエですので、正解は選択肢①となります。
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