今日は、賃貸不動産経営管理士試験 令和2年度 第20問について解説します。
敷金に関する次の記述のうち、誤っているものの組合せはどれか。
ア 借主は、不払賃料額の弁済に敷金を充てるよう貸主に請求することはできない。
イ 賃貸借契約継続中に敷金返還請求権が差し押えられた場合、貸主は、速やかに敷金相当額を差押債権者に支払わなければならない。
ウ 敷金は、原状回復とされている借主の毀損・汚損に対する損害賠償も担保する。
エ 貸主Aが賃貸物件を第三者Bに譲渡する際、賃貸人たる地位をAに留保する旨、AB間で合意すれば、貸主の地位はAに留保され、Aは敷金返還義務を負う。
1 ア、イ
2 ア、ウ
3 ウ、エ
4 イ、エ
解説
敷金に関する問題です。
それではさっそく選択肢をみていきましょう。
選択肢 ア
借主は、不払賃料額の弁済に敷金を充てるよう貸主に請求することはできない。
〇適切です。
敷金の充当について、まとめシートでは以下の通り解説しています。
貸主は、任意に敷金を債務の弁済に充てることができます。一方、借主からは敷金を家賃に充当するように主張することはできません。
選択肢の説明通りですので、この選択肢は適切です。
選択肢 イ
賃貸借契約継続中に敷金返還請求権が差し押えられた場合、貸主は、速やかに敷金相当額を差押債権者に支払わなければならない。
×不適切です。
敷金返還請求権が発生するのは、賃貸借契約が終了し、物件の明渡しが完了したときです。
賃貸借契約を継続しているときは、まだ敷金返還請求権が発生していませんので、差押債権者に対して敷金を支払う必要はありません。
敷金を支払う時期は、賃貸借契約が終了し建物を明け渡した後で、支払う金額は、敷金から未払い賃料などの債務を差し引いた額となります。
つまり、賃貸借契約継続中に敷金返還請求権が差し押えられた場合、貸主は、賃貸借契約が終了し建物を明け渡した後で、敷金から債務を差し引いた額を差押債権者に支払わなければなりません。よってこの選択肢は不適切です。
選択肢 ウ
敷金は、原状回復とされている借主の毀損・汚損に対する損害賠償も担保する。
〇適切です。
敷金には、賃貸契約上の債務を担保する目的があります。
賃貸契約上の債務の担保に含まれるものには、未払いの賃料もありますが、借主の故意または過失による毀損や汚損など借主が負担すべき原状回復費用についても含まれます。
選択肢の説明通りですので、この選択肢は適切です。
選択肢 エ
貸主Aが賃貸物件を第三者Bに譲渡する際、賃貸人たる地位をAに留保する旨、AB間で合意すれば、貸主の地位はAに留保され、Aは敷金返還義務を負う。
×不適切です。
原則として、借主へ建物の引渡しが完了しているときに、所有者が変わった場合は、貸主の地位も新しい所有者に移転します。
ただし、賃貸物件の譲渡人(A)と譲受人(B)の間で、貸主の地位を譲渡人に留保することの合意と、譲渡人に賃貸物件を賃貸することの合意があれば、貸主の地位は譲受人に移転することなく、譲渡人に留保されることになります。
なお、Aに貸主の地位が留保された場合、敷金返還義務はAにあります。
つまり、貸主Aが賃貸物件を第三者Bに譲渡する際、賃貸人たる地位をAに留保する旨と、Aに賃貸物件を賃貸することについて、AB間で合意すれば、貸主の地位はAに留保され、Aは敷金返還義務を負ことになります。よってこの選択肢は不適切です。
以上から、誤っている選択肢はイとエですので、正解は選択肢④となります。
賃料や敷金について、ぜひ関連解説もあわせてご確認いただければと思います。
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