今日は、財務・会計R5(再試)第19問について解説します。
モジリアーニ・ミラー理論に関する記述として、最も適切なものはどれか。なお、株式市場は完全で、取引コストは存在しないものとする。
ア 法人税が存在するとき、負債の利用度が高まるほど、株主資本コストは低下する。
イ 法人税が存在するとき、負債の利用度が高まるほど、全社的加重平均資本コストは低下する。
ウ 法人税がないとき、負債の利用度が高まるほど、株主資本コストは低下する。
エ 法人税がないとき、負債の利用度が高まるほど、全社的加重平均資本コストは低下する。
解説
MM理論に関する問題です。
まとめシートでは、以下の通り解説しています。
MM 理論とは、完全資本市場を仮定した理論モデルで、法人税が存在しない理論上の完全資本市場では、以下のような命題が成立します。
第1命題:どんな資本構成でも企業価値は変わらない
第2命題:企業の利益配分と企業価値は無関係である
第3命題:投資のための切捨率は資金調達方法に関わりなく一意に決定される
ちょっと難しそうに思えますが、とりあえず最初は第1命題の「企業の資本構成や配当政策は企業価値に影響を与えず、どのような資本構成や配当政策でも企業価値は同じになる」という点を押さえておけばOKです。なお、完全資本市場というのは、情報取得のためのコストが全くかからず、法人税もなく、商品の流動性が十分あるという理論上の市場のことを意味します。また、第3命題の切捨率とは、資本コストのようなもので、投資のための資本コストはどんな方法で資金を調達してもある一定の値に決定されるということです。
ちなみに、法人税が存在する場合は、MM の修正命題として、負債比率が高まると負債の節税効果によって、節税効果の現在価値分だけ企業価値が向上するという定理が示されています。これはつまり、以下のように表すことができます。
借入のあるときの企業価値=借入のないときの企業価値+税率×負債(借入額)
この式から、法人税がある場合は、借り入れがあると、負債の節税効果によって、企業価値が上がることがわかります。なお、WACCは下がります。
それでは選択肢をみていきましょう。
選択肢ア:誤りです。負債の利用度が高まるほど、株主リスクプレミアムが大きくなるので、株主資本コストは上昇します。
選択肢イ:その通りです。
選択肢ウ:誤りです。アと同様です。
選択肢エ:誤りです。法人税がない場合は、加重平均資本コスト率は不変です。
以上から、正解は選択肢イとなります。
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