今日は、経営法務 R5 第1問について解説します。
株主総会に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 株主総会の報告事項及び決議事項について、株主総会における決議及び報告のいずれも省略することが可能となった場合、株主総会の開催を省略することができるため、株主総会議事録の作成も不要となる。
イ 公開会社ではない会社及び公開会社のいずれの会社においても、取締役又は株主が提案した株主総会の目的である事項について、当該提案につき議決権を行使することができる株主の全員から書面又は電磁的方法により同意の意思表示があったときは、当該提案を可決する旨の決議があったものとみなされる。
ウ 公開会社ではない会社においては、株主総会は、株主全員の同意があるときは招集手続を経ることなく開催することができるが、公開会社においては、定款に書面による議決権行使及び電磁的方法による議決権行使に関する定めがあるか否かにかかわらず、株主全員の同意があっても、招集手続を経ることなく株主総会を開催することはできない。
エ 公開会社ではない会社においては、取締役が株主の全員に対して株主総会に報告すべき事項を通知した場合において、当該事項を株主総会に報告することを要しないことについて株主の全員が書面又は電磁的方法により同意の意思表示をしたときは、当該事項の株主総会への報告があったものとみなされるが、公開会社においては、このような株主全員の同意の意思表示があっても、当該事項の株主総会への報告があったものとみなされない。
解説
株主総会 に関する問題です。
まとめシートでは、以下の通り解説しています。
株主総会:公開会社の株主総会は、取締役か、もしくは6か⽉前から引き続き3%以上の議決権を持っている株主が招集できます。招集は株主総会の2週間前までに書⾯か電磁的⽅法(電⼦メールなど)で通知する必要があり、招集期間の短縮はできません。議決権は原則1株1議決権で、定款で定めれば1単元1議決権とできます。議事録は本店に10年間備え置く必要があり、その写しを⽀店に5年間備え置く必要があります。 取締役会を設置している⾮公開会社の株主総会は、公開会社と同じく取締役か3%以上の議決権を持っている株主が招集できます(6か⽉前の保有期間制限はありません)。招集は株主総会の1週間前まで(書⾯投票や電⼦投票を採⽤する会社は2週間前まで)に書⾯か電磁的⽅法(電⼦メールなど)で⾏う必要があり、招集期間の短縮はできません。議決権は原則1株1議決権で、定款で定めれば1単元1議決権とできます。さらに、⾮公開会社の議決権は定款で定めれば株主ごとに異なる取扱いとすることも可能です。議事録は公開会社と同じく本店に10年間備え置く必要があり、その写しを⽀店に5年間備え置く必要があります。
株主総会の決議:株主総会の決議には、普通決議と特別決議があります。普通決議も特別決議も、議事を進め議決するのに必要な最⼩限の⼈数である定⾜数は、原則として議決権を⾏使できる株主の議決権の過半数です。例えば、100株のときであれば、定⾜数は51株です。普通決議の議事を議決するために必要な最⼩限度の得票数である表決数は、出席株主の議決権の過半数です。例えば、出席株主の議決権数が51であれば、表決数は26です。主な決議事項は、役員の選任、監査役以外の役員の解任、計算書類の承認、役員の報酬、剰余⾦の分配(配当)などです。特別決議の表決数は、出席株主の議決権の2/3以上です。例えば、出席株主の議決権数が51であれば、表決数は34です。主な決議事項は、監査役の解任、資本⾦の減額(減資)、定款の変更、事業譲渡や合併などの組織再編等、解散などです。なお、例外として普通決議においても特別決議においても、定⾜数は定款に定めれば任意に設定することができますが、役員の選任決議、監査役以外の役員の解任決議、特別決議は1/3を下回る定⾜数とすることはできません。また、表決数は定款により増やすことはできますが、減らすことはできません。
株主の権利:株主の権利には、⾃益権と共益権があります。⾃益権は配当をもらう権利のように株主⾃⾝が儲ける権利であり、共益権は株主総会の議決権のように株主が会社の管理や運営に関与する権利のことをいいます。共益権の1つとして、株主提案権という権利があります。株主提案権は、議題提案権、議案提案権、議案要領通知請求権を合わせたもののことをいいます。議題提案権とは、株主総会のテーマである議題を提⽰する権利のことです。例えば、「取締役選任の件」というのが議題で、「Aさんを取締役に推薦する」というのが議案です。なお、議題の提案は、取締役会設置会社では1%以上または300個以上の株式を保有する株主しか提⽰することができません。議案提案権とは、株主総会のテーマである議題に対する具体的提案である議案を提⽰する権利のことです。ただし、株主から提案された議案が1/10以上の賛成を得られなかった場合、会社はその議案と実質的に同⼀の議案について3年を経過していない場合にはその株主提案を拒絶できます。議案に関する権利はすべての株主が持っています。
それでは選択肢をみていきましょう。
選択肢ア:誤りです。
よって、この選択肢は×です。
選択肢イ:その通りです。
よって、この選択肢は〇です。
選択肢ウ:誤りです。
よって、この選択肢は×です。
選択肢エ:誤りです。
よって、この選択肢は×です。
以上から、正解は選択肢イとなります。
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