今日は、経営法務のH27 第14問について解説します。
著作権及び著作者人格権に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
ア 契約によって「著作権の全部を譲渡する」旨の条項を定めることにより、著作権を構成する複製権等の支分権を個別に特定しなくても、支分権の全てが譲渡人から譲受人に移転する。
イ 著作権法上、職務上作成する著作物の著作者は、雇用契約等で別途規定しない限り使用者であるから、使用者が法人であっても著作者人格権に基づき当該著作物の改変行為の差止めを請求できる。
ウ 電子書籍の出版権者は、電子書籍の公衆送信権のみを専有するにとどまるが、海賊版業者が違法配信目的で電子書籍の複製を行う行為の差止めを請求できる。
エ わが国の著作権法上、リバース・エンジニアリングがプログラムの著作物の著作権を侵害するか否かについては議論があるが、これを禁止する条項をソフトウェアの使用許諾契約で定めることは可能である。
解説
著作権と著作者人格権に関する問題です。
それでは選択肢をみていきましょう。
選択肢ア:誤りです。普通に著作権を譲渡するだけの場合、すべてが譲渡されるわけではなく、翻訳権・翻案権等、⼆次的著作物の利⽤に関する権利、著作者⼈格権は著作者に残ります。そのため、ライセンス等で著作権を活⽤する際は、どのように著作物を利⽤したいのかということと、権利が譲渡の対象になるのかどうかを確認して契約する必要があります。
よって、この選択肢は×です。
選択肢イ:その通りです。著作権の場合は職務著作といい、職務上発⽣した著作権は原則としてはじめから使⽤者に帰属し、使⽤者は著作権、著作者⼈格権の両⽅を有します。
この点については、職務発明とセットで覚えるとよいので、以下まとめシートの解説を参考にしてみてください。
よって、この選択肢は〇です。
選択肢ウ:出版権とは、本を出版するために複製権の独占的利⽤を許諾することです。著者が出版社に出版権を与えると他の出版社が複製権を利⽤することができなくなります。この出版権は著作権独特の権利で、電⼦出版に対しても出版権が与えられています。非常に細かい点で、且つ各予備校からもこの選択肢は〇では?との声も上がっているので、ここは一旦パスしてください。
選択肢エ:その通りです。リバースエンジニアリングとは、製品を分解するなどして、製品の構造を分析し、動作原理や製造方法、設計図の仕様、ソースコードなどを明らかにする開発手法のことをいいます。これを禁止する条項をソフトウェアの使用許諾契約で定めることは可能であると考えられます。
よって、この選択肢は〇です。
以上から、不適切なものを選びますので、正解は選択肢アとなります。
本問は、ウとエが細かい点で且つ判断しにくい選択肢でもありますので、復習の際はアとイについてしっかりと押さえておけばよいでしょう。
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