今回は、H24年経営法務の第5問について解説します。
H24 第5問
中小企業診断士であるあなたと、顧客である甲氏との間の遺産分割に関する以下の会話を読んで、あなたの回答として空欄に当てはまる最も適切なものを下記の解答群から選べ。
甲氏:「実は、私の友人のAさんに私の会社から300万円貸していたんですよ。
ところが、そのAさんは、1年ほど前に亡くなってしまって…。
Aさんの奥さんはもうお亡くなりになっているんですが、息子さんが2人いるんです。それで、たまたま、次男のほうは、大きな会社に勤める人で知っていたものですから、Aさんに貸したお金を返して欲しいという話を3か月くらい前にしに行ったんですよ。
そうしたら、その次男が言うには、去年の夏に、長男と次男で、遺産分割協議をして、全部長男が相続することになった、だから、自分は支払う必要はないはずだ、って言うんですよ。それで、その次男からは、司法書士に作ってもらったという遺産分割協議書も見せられたんですが、確かに、長男と次男の連名で実印も押してあって、長男が全部相続して次男は何も相続しないことになっていたんです。
ですので、先日、長男の家を訪ねたのですが、長男はリストラにあってしまって、お金がないので、返したくても返せないと言うんですよ。
次男は、大きな会社に勤めているので、返す能力はあると思うのですが、次男に請求することはできないんでしょうかね…。」
あなた:「 [ ]。弁護士を紹介しますからご相談されてはいかがですか。」
[解答群]
ア 遺産分割されてしまったのであれば、仕方がありませんから、長男から300万円返してもらえるか、何かいい方法がないか考えた方がいいと思います
イ 次男に請求することも可能ですが、請求した場合、次男としてはそれから30日以内に相続放棄の手続をとれば相続放棄が認められますから、結局は次男からは回収できないこととなってしまうと思います
ウ 次男は遺産分割協議書を作成していたとしても相続放棄をしたことにはなりませんから、法定相続分に従って、150万円の返済を次男に求めることはできるはずですよ
エ 負債があるのに1人にだけ資産を全部集中させる内容の遺産分割は無効ですから、次男に300万円請求することはできるはずですよ
解説
相続の遺産分割に関する問題です。
相続の際、財産を相続人に分配する手続きを遺産分割といいます。相続人が相続する財産や負債は原則として法定相続分に応じたものとなりますが、遺言や相続人全員の話し合い、家庭裁判所の決定などがあった場合は法定相続分と異なる分配を行うことができます。ただし、借金(負債)に関しては法定相続分に応じた分配しかできません。
それでは、これを踏まえて各選択肢を見ていきましょう。
選択肢アは、遺産分割しても、負債に関しては法定相続分に応じた分配しかできませんので、「仕方ありません」と諦めるのはまだ早いです。よって、この選択肢は×です。
選択肢イの相続放棄の手続きは、相続開始を知ったときから3か月以内に行う必要があります。
問題文を見ると、「Aさんは1年ほど前に亡くなった」とありますので、相続放棄の手続きは間に合いません。
よって、この選択肢は×です。
選択肢ウは、その通りで、負債に関しては法定相続分に応じた分配しかできません。
選択肢エは、「次男に300万円請求することはできる」とありますが、次男に請求できるのは150万円までです。よって、この選択肢は×です。
以上から、正解は選択肢ウとなります。
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