今日は経済学のH26第12問について解説します。
H26 経済学 第12問
下表は、日本のGDP成長率、GDP成長率への労働の寄与、GDP成長率への資本の寄与を表したものである。成長会計から、GDP成長率への全要素生産性(TFP)の寄与を下表から読み取った記述として最も適切なものはどれか。
ア GDP成長率へのTFPの寄与は、「1985‐1989年」から「2005‐2009年」まで一貫してプラスであった。
イ GDP成長率へのTFPの寄与は、「1985‐1989年」と「2000‐2004年」ではプラスであった。
ウ GDP成長率へのTFPの寄与は、「1985‐1989年」のみマイナスであった。
エ GDP成長率へのTFPの寄与は、「2005‐2009年」のみマイナスであった。
解説
成長政策に関する問題です。
成長会計とは、経済成長を資本と労働という生産要素とそれ以外の技術進歩の3つの要因に分けて把握するための手法で、経済成長率を以下の式のように表します。
経済成長率=全要素生産性(TFP)+資本ストックの寄与度+労働の寄与度
この式で、全要素生産性(TFP)とは技術の水準を表し、経済成長、資本ストック、労働は定量的に計測することができますが、全要素生産性は定量的に計算できないため、以下の式により、差分から計測する場合があります。
全要素生産性(TFP)=経済成長率-(資本ストックの寄与度+労働の寄与度)
これを踏まえて問題を解いていきます。
この問題では、上記の式を使って全ての期間の全要素生産性を求めていけば解くことができますが、
選択肢を見ると「1985‐1989年」が3つの選択肢で挙げられているので、まず、「1985‐1989年」のTFPを計算してみます。
「1985‐1989年」のTFP
TFP=4.6-(0.7+2.3)=1.6
より「1985‐1989年」のTFPはプラスということがわかります。
そのため、選択肢ウは誤りであるということがわかります。
残りのア、イ、エの選択肢を見ると、「2005‐2009年」が2つの選択肢で挙げられているので、次に「2005‐2009年」のTFPを計算してみます。
「2005‐2009年」のTFP
TFP=-0.4-(-0.2+0.5)=-0.7
より「2005‐2009年」のTFPはマイナスということがわかります。
そのため、選択肢アは誤りであるということがわかります。
残る選択肢はイとエです。
選択肢エが正しいことを確認するためには全ての期間のTFPを計算して「2005‐2009年」のみマイナスであることを確認する必要がありますが、選択肢イが正しいことを確認するには、「2000‐2004年」がプラスかどうかを確認すれば良いため、次は「2000‐2004年」のTFPを計算してみます。
「2000‐2004年」のTFP
TFP=1.4-(-0.1+0.6)=0.9
より「2005‐2009年」のTFPはプラスということがわかります。
そのため、選択肢イが正しく、選択肢エは誤りであるということがわかります。
以上から、正解は選択肢イとなります。
このように、少し工夫することで、計算する手間を節約することができます。
今回の問題の場合、計算量はたかが知れていて、正確な数値というよりはプラスかマイナスかを判断すればいいだけでしたので、何も考えずに全期間プラス/マイナスを判断するというのもありかと思います。
ただ、計算が面倒くさい問題の場合などは、上記のように、選択肢の情報を参考に計算の順番を工夫し計算量を節約するという方法も使うことができますので、計算が面倒くさい問題では、ぜひ活用してみてください。
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