今日は経済学H30第16問の外部不経済に関する問題について解説します。
外部不経済について考える。いま、マンションの建設業者と周辺住民が、新しいマンションについて交渉を行う。ここでは、周辺住民が地域の環境資源の利用権を持っているとする。マンションの建設によって、地域環境の悪化という外部不経済が発生するので、マンションの建設業者は補償金を周辺住民に支払うことで問題を解決しようとする。
下図には、需要曲線、私的限界費用曲線、社会的限界費用曲線が描かれている。この図に関する記述として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
〔解答群〕
ア 資源配分が効率化する生産水準において、マンションの建設業者が補償金として支払う総額は □BFHC である。
イ マンションの建設による外部不経済下の市場均衡において、外部費用は□BFHC で示される。
ウ マンションの価格と、マンションの建設による社会的限界費用は、生産量がQ0 のもとで等しくなる。
エ マンションの建設による外部不経済が発生しているもとでの生産量は Q0 になり、総余剰は △AEC で示される。
解説
外部不経済の分析に関する問題です。外部不経済には是正方法がいくつかありますが、設問の状況のように当事者間で協議して解決することはコースの定理と呼ばれます。
まず「需要曲線、私的限界費用曲線、社会的限界費用曲線」はどれかを特定しましょう。
需要曲線(D)は経済学のグラフに共通の「右肩下がり」で特定可能です。そして問題文から、社会的費用曲線(S)は補償金を支払うケース、私的限界費用曲線(S’)はマンション建設で外部不経済が生じるケースの曲線と考えられますので、企業側としてコストが高くなる(補償金を支払う)曲線Sが上側、曲線S’が下側になると特定できます。
[図1]
この時、外部不経済の状況と補償金を支払う状況について、それぞれ余剰分析は以下の通りとなります。
[図2]
[図3]
それでは、選択肢を見ていきましょう。
選択肢アの「資源配分が効率化する生産水準」とは生産者余剰(赤の△)と消費者余剰(青の△)の面積(社会的総余剰と言います)が最大化する状況を指します。
[図2]での社会的総余剰は、△ABFから死荷重△FGEを引いた状況となります。一方、[図3]では社会的総余剰が△ABFとなり、こちらの方が面積が大きいです。この時、外部不経済は補償金の支払として□BFHCで表現されます。
よって、選択肢アが正解となります。
念のため、他の選択肢も確認しましょう。
選択肢イは、設問から[図2]の状況を指します。この時の外部費用はすなわち外部不経済の面積を指しますので、□BCEGとなります。
よって、この選択肢は誤りです。
選択肢ウは、Q0のもとで社会的限界費用と均衡するということになりますが、それでは点Gが曲線Dと均衡していなければならず、問題文に当てはまりません。
よって、この選択肢は誤りです。
選択肢エについては[図2]での社会的総余剰を説明していますが、選択肢アの解説で触れたように[図2]における社会的総余剰は△ABFから死荷重△FGEを引いた面積となります。
よって、この選択肢は誤りです。
以上より、選択肢アが正解となります。