今日は財務会計のH26第20問(設問1)~(設問3)の問題について解説します。
H26 財務・会計 第20問
企業価値評価に関する次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。
企業価値評価では、一般的に①PBRやPERなどの諸比率を用いた[ ]に代表されるマーケット・アプローチと呼ばれる手法のほか、企業の期待キャッシュフローの割引現在価値によって評価額を推計する②DCFアプローチ、企業の保有する資産や負債の時価などから企業価値を評価するコスト・アプローチといった手法も用いられている。(設問1)
文中の空欄に入る語句として、最も適切なものはどれか。
ア 収益還元法
イ 純資産価額法
ウ マルチプル法(乗数法)
エ リアルオプション法(設問2)
文中の下線部①に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア PBR とは、株価を1株当たり売上総利益で除して求められる。
イ PBR とは、株価を1株当たり売上高で除して求められる。
ウ PBR とは、株価を1株当たり純資産で除して求められる。
エ PBR とは、株価を1株当たり当期純利益で除して求められる。(設問3)
文中の下線部②について、以下の問いに答えよ。
A社の財務データは以下のとおりである。なお、A社の営業利益は、利息・税引前キャッシュフローに等しく、将来も永続的に期待されている。A社は負債を継続的に利用しており、その利息は毎年一定である。また、A社の法人税率は40%であり、税引後利益はすべて配当される。負債の利子率が5%、株式の要求収益率が9%であるとき、負債価値と株主資本価値とを合わせたA社の企業価値をDCF法によって計算した場合、最も適切な金額を下記の解答群から選べ。
【A社のデータ】(単位:万円)
営業利益 1,100
支払利息 500
税引前利益 600
法人税8税率(40%) 240
税引後利益 360[解答群]
ア 4,000万円
イ 6,000万円
ウ 14,000万円
エ 14,333万円
解説
それでは早速各設問を見ていきましょう。
【設問1】
企業価値の算定方法について問われています。
まとめシートでも解説しましたが、企業価値の求め方には、フローの考え方に基づくインカムアプローチとストックの考え方に基づくコストアプローチやマーケットアプローチがあります。
そして、インカムアプローチの代表的な手法には、DCF法や収益還元法が、コストアプローチの代表的な手法には、簿価純資産法や時価純資産法が、マーケットアプローチの代表的な手法には、市場価格法やマルチプル法などがあります。
今回の問題では、マーケットアプローチの手法が問われていますので、空欄には選択肢ウの「マルチプル法(乗数法)」が入ります。
【設問2】
この問題はPBRの求め方を覚えていれば一発で解ける問題です。
PBRの求め方は、まとめシートでも説明しましたが、以下の通りでしたね。
PBR=時価総額/純資産=株価/1株あたり純資産
そのため、設問2の正解は選択肢ウとなります。
このような公式を覚えていれば解ける問題は絶対に得点できるようになっておきましょう。
【設問3】
企業価値の計算問題です。
この問題の場合、負債と資本の比率がわからないため、WACCを求めることができませんので、
企業価値=負債価値+株式価値
とし、負債価値と株式価値をそれぞれ求めることとします。
①負債価値
債権者にとってのキャッシュフローは支払利息であり、資本コストは利子率ですので、
負債価値=支払利息÷利子率
によって求められます。よって、
負債価値=500÷0.05=10,000
より、10,000万円となります。
②株式価値
株主にとってのキャッシュフローは配当であり、資本コストは株式の要求収益率ですので、
株式価値=配当÷株式の要求収益率
によって求められます。
「税引後利益はすべて配当される」とありますので、配当=税引き後利益で
株式価値=360÷0.09=4,000
より、4,000万円となります。
以上から
企業価値=10,000+4,000=14,000
となり、正解は選択肢ウの14,000万円となります。
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