今回は、財務・会計から、平成28年の第18問のポートフォリオ理論に関する問題について解説します。
H28 財務・会計 第16問
以下のグラフは、ポートフォリオ理論の下での、すべてのリスク資産と無リスク資産の投資機会集合を示している。これに関して、下記の設問に答えよ。
(設問1)
無リスク資産が存在しない場合の記述として最も適切なものはどれか。
ア B-C間を効率的フロンティアと呼ぶ。
イ 均衡状態においては、すべての投資家が同一のポートフォリオを所有する。
ウ 合理的な投資家は A-B間から、各人のリスク回避度に応じてポートフォリオを選択する。
エ 投資家のリスク回避度が高くなるほど、点Cに近いポートフォリオを選択する。
(設問2)
無リスク資産が存在する場合の記述として最も適切なものはどれか。
ア 均衡状態においては、すべての投資家が所有する危険資産と無リスク資産の比率は同じである。
イ 資金の借り入れが、無リスク資産利子率において無制限に可能である場合、投資家は D-E間を選択せず、F-D間から各自のリスク回避度に応じてポートフォリオを選択する。
ウ すべてのリスク回避的な投資家は無リスク資産のみに投資する。
エ 点Dを選択する投資家も存在する。
解説
ポートフォリオ理論について問われています。
(設問1)
設問1は、無リスク資産が存在しない場合について問われています。
無リスク資産が存在しない場合、リスク資産のポートフォリオのリスクとリターンは曲線ACで表すことができます。
それでは早速各選択肢を見ていきましょう。
選択肢アはその通りで、曲線BCは効率的フロンティアと呼ばれます。
これですぐに正解を確定できましたが、念のため他の選択肢も見ておきましょう。
選択肢イについて、投資家は効率的フロンティア上のどこかの組み合わせをそれぞれ選択するため、同一のポートフォリオを所有するという記述は×となります。
選択肢ウについて、曲線AB上は同じリスクでもよりリターンの高いポートフォリオが他にあるため、合理的な投資家はAB間からではなく、BC間からポートフォリオを選択します。
選択肢エについて、リスク回避度が高いということはリスクを嫌うということですので、より点Bに近いポートフォリオを選択します。
よってこの選択肢は×です。
以上から設問1の正解は選択肢アとなります。
(設問2)
設問2は、無リスク資産(安全資産)が存在する場合について問われています。
この無リスク資産をポートフォリオに組み入れた場合、最もリスクを嫌う投資家は全て無リスク資産に投資します。また、リスク資産と無リスク資産の組み合わせは曲線AC上の点と点Fを結んだ直線上にあります。このとき、同じリターンでリスクが最小となるのは、点Fを通り、曲線ACに接点Dで接するように引いた直線FD上にあり、この直線FDを資本市場線と呼びます。また、この時の接点Dをマーケットポートフォリオと呼びます。
それでは、これを踏まえて各選択肢を見ていきましょう。
選択肢アについて、無リスク資産が存在するとき、投資家は直線FD上のいずれかの組み合わせで資産を保有しますので、所有する危険資産と無リスク資産の比率は同じという記述は×となります。
選択肢イは、資金の借り入れが、無リスク資産利子率において無制限に可能である場合、無リスク資産を借りてリスク資産に投資することもできます。この問題の場合、F-D間は借り入れがないとき、D-E間は借入を行ったときのポートフォリオですので、この記述は×となります。
選択肢ウについて、無リスク資産が存在するとき、投資家は直線FD上のいずれかの組み合わせで資産を保有しますので、全ての投資家が無リスク資産にのみ投資するということはありません。
選択肢エはその通りで、無リスク資産へ全く投資をしない投資家は点Dを選択します。
以上から設問2の正解は選択肢エとなります。
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