今回は、財務・会計から、平成24年の第17問について解説します。
H24 財務・会計 第17問
次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。
現在、X社は総資本10億円(時価ベース)の全額を株主資本で調達して事業活動を行っており、その税引前総資本営業利益率は12%である。また、ここでの税引前営業利益は税引前当期利益に等しく、また同時に税引前キャッシュフローにも等しいものとする。X社は今後の事業活動において、負債の調達と自己株式の買い入れによって総資本額を変えずに負債と株主資本との割合を4:6に変化させることを検討しており、その影響について議論している。
(設問1)
もし市場が完全で税金が存在しない場合、X社が資本構成を変化させたとき、ROEは何%となるか。最も適切な数値を選べ。なお、負債利子率は6%であり、資本構成の変化によって税引前総資本営業利益率は変化しないものとする。
ア 6%
イ 12%
ウ 16%
エ 18%
(設問2)
完全市場において法人税のみが存在する場合、X 社が資本構成を変化させることで、企業全体の価値にどのような影響があるか。最も適切なものを選べ。な
お、実効税率は40% である。
ア 2,400万円企業価値が減少する。
イ 2,400万円企業価値が上昇する。
ウ 16,000万円企業価値が減少する。
エ 16,000万円企業価値が上昇する。
解説
今回の問題は設問1が財務レバレッジ、設問2がMM理論についての問題です。
それでは各設問を見ていきましょう。
(設問1)
これは財務レバレッジの式を使って求める問題です。
財務レバレッジの式は、
でしたね。
ちょっと覚えにくいですが、これを使うと自己資本利益率、つまりROEを求めることができます。
今回の問題の場合ですと、税金が存在しない、とありますのでt=0となります。
ROAは、事業利益÷総資産で、事業利益=営業利益+営業外収益として求めます。
今回の場合、税引前総資本営業利益率が12%で、営業外収益は特にないようですので、
ROA=12%となります。
また、負債比率は、負債÷自己資本として求め、「総資本額を変えずに負債と株主資本との割合を4:6に変化させる」とありますので、
負債比率=4÷6=2/3
となります。
また、負債利子率iは問題文より6%となります。
これを公式に代入すると、
自己資本利益率=(1-0)(12%+2/3×(12%-6%))
=12%+4%=16%
となり、正解は選択肢ウの16%となります。
ちなみに、上記の財務レバレッジの式を忘れてしまっても、この問題の場合、別の方法でも解くことができます。
ROE、つまり、自己資本利益率を求める問題ですので、
自己資本利益率=当期純利益÷自己資本
として、それぞれを求めるという方法です。
総資本10億円(時価ベース)の全額自己資本の会社が、負債対自己資本比率を4:6に変化させたということなので、負債が4億円、自己資本が6億万円となります。
また、当期純利益は、税引前総資本営業利益率が12%なので、
営業利益が10億円×12%より1.2億円、
営業外費用が利子の分だけ発生し、
4億円×6%=0.24億円 より0.24億円、税金は考慮しないので、
当期純利益=1.2億円-0.24億円=0.96億円
となり、
自己資本利益率=0.96億円÷6億万円=0.16 より、16%と求めることもできます。
どちらを使っても求めることができるので、解きやすい方で解いてみてください
(設問2)
この問題はMMの修正命題で示される式を使って解きます。
MMの修正命題は
でしたね。
これを踏まえると
企業価値=10億円+0.4×4億円=11.6億円
となり、
企業価値は1.6億円増加します。
そのため、正解は選択肢エの「16,000 万円企業価値が上昇する」となります。
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