【過去問解説(経済学)】R6 第18問 外部不経済

今日は、経済学のR6第18問について解説します。

 経済学 R6 第18問

下図は、ある観光資源に関する消費の外部不経済を示している。観光客の増加に伴う交通渋滞やゴミの投棄など、観光資源の消費は近隣の環境や住民に無視できない損害を生じさせる場合がある。観光資源に対する消費者(観光客)の限界価値曲線はDoであるが、第三者への損害を考慮した場合の社会的限界価値曲線はD1である。

この図に関する記述として、最も適切な組み合わせを下記の解答群から選べ。

a 完全競争市場での均衡下で生じる死荷重は、四角形GFHEである。

b 完全競争市場での均衡下での外部不経済は、四角形CAHEである。

c 社会的に最適な消費が実現したときの社会的余剰は、四角形CBFGである。

d 社会的に最適な消費が実現したときの外部不経済は、四角形CAFGである。

 

〔解答群〕

ア aとb

イ aとd

ウ bとc

エ bとd

解説

外部不経済に関する問題です。
まとめシートでは、以下の通り解説しています。

外部不経済がある場合、外部に与えている悪影響に対応するための費⽤を供給者が負担せずに外部に負担させているため、⾃社が負担する限界費⽤である私的限界費⽤(PMC:Private Marginal Cost)は社会全体で負担する限界費⽤である社会的限界費⽤(SMC:Social Marginal Cost)より⼩さくなります。

次に、外部不経済が存在するにもかかわらず、何の規制も⾏われない場合の社会的総余剰について考えます。そのとき、供給者は外部費⽤を考えず、図のPMCと需要曲線の交点であるQPだけ⽣産を⾏います。このときの価格はPPで、私的限界費⽤のみを考慮した社会的総余剰は図の⿊い三⾓の枠で⽰される部分となります。それに対し、社会的限界費⽤を考慮した場合、供給者は図のSMCと需要曲線の交点であるQSだけ⽣産を行い、このときの価格はPs、社会的総余剰は濃いグレーの網掛けで⽰した部分となります。そして、外部不経済による追加費⽤は、図の薄いグレーで⽰す平⾏四辺形の部分で表されます。私的限界費⽤のみを考慮した社会的総余剰から、外部不経済による追加費⽤と社会的限界費⽤を考慮した社会的総余剰を引いた斜線の部分が死荷重となります。
このように、外部不経済が存在するにもかかわらず、何の規制も⾏われない場合、死荷重が⽣じてしまうため、社会的に望ましい状態を実現することができません。これらを解決するための対策として、ピグー税や補助⾦、排出権取引、コースの定理などがあります。

なお、今回の問題は供給曲線の側ではなく需要曲線の側で複数の曲線がある形ですが、考え方は上記の説明と同じです。

それでは選択肢をみていきましょう。

:誤りです。完全競争市場の均衡下では、点EやHの数量だけ生産を行います。そこで生じる死荷重は三角形EHFとなります。なお、社会的総余剰は三角形ABF−三角形EHFとなります。

:その通りです。完全競争市場の均衡下では、外部不経済は四角形CAHEになります。

:誤りです。社会的に最適な消費が実現したときは、点GやFの数量だけ生産を行います。そのときの社会的総余剰は三角形ABFとなります。なお、四角形C AFGは消費者余剰として加算されますが、外部不経済として減算されるため、結果として相殺され社会的総余剰には入りません。なお、死荷重は出てきません。

:その通りです。社会的に最適な消費が実現したときの外部不経済は四角形C AFGとなります。

以上から、a:誤  b:正  c:誤  d:正ですので
正解は選択肢エとなります。

 

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