今日は、経済学のR6第16問(設問2)について解説します。
短期の完全競争市場下における価格と企業の生産との関係を考える。下図には、ある財の生産に関する限界費用曲線MC、平均費用曲線ACおよび平均可変費用曲線AVCが描かれており、価格が与えられると企業は最適生産を実現するものとする。ただしP1はACの最小値、P3はAVCの最小値に対応している。
この図に基づいて、下記の設問に答えよ。
(設問2)
この図に関する記述の正誤の組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
a 価格がP1のとき、企業の総収入は可変費用と固定費用の合計に等しくなる。
b 価格がP2のとき、企業の損失は固定費用の一部のみとなる。
c 価格がP3のとき、企業の損失は可変費用のみとなる。
〔解答群〕
ア a:正 b:正 c:正
イ a:正 b:正 c:誤
ウ a:正 b:誤 c:誤
エ a:誤 b:正 c:正
オ a:誤 b:誤 c:誤
解説
費用関数に関する問題です。
まとめシートでは、以下の通り解説しています。
MC(x)、AC(x)、AVC(x)の3つのグラフを描くと漢字の「⼿」のような形になります。
このグラフで考えると、企業はMC(x)=Pとなる⽣産量だけ⽣産を⾏いますので、企業の総収⼊はP×xとなります。
また、総費⽤はMC(x)=Pとなるxのときの1単位当たりの平均費⽤に⽣産量xを掛けたものです。同様に可変費⽤の総額は、総費⽤はMC(x)=Pとなるxのときの1単位当たりの平均可変費⽤に⽣産量xを掛けたものです。
次にPが変化した場合を考えてみましょう。MC(x)=PとなるPがACよりも⼤きいときは、⿊字になりましたが、もしMC(x)=PとなるPがACよりも⼩さくなった場合はどうでしょうか。この場合は、総収⼊<総費⽤となるため、⾚字となります。そのため、MCとACの交点は⾚字と⿊字の分かれ⽬、つまり損益分岐点となります。
さらにPが⼩さくなり、MC(x)=Pとなる⽣産量がAVCよりも⼩さくなった場合はどうでしょうか。このときは総収⼊が可変費⽤総額を下回ることになります。このとき、固定費⽤はもちろん可変費⽤すら回収できなくなるので、企業は⽣産するだけ⾚字が拡⼤することになり、操業を⽌めた⽅が得になります。そのため、MCとAVCの交点は操業をするかどうかの分かれ⽬、つまり操業停⽌点となります。
それでは選択肢をみていきましょう。
a:その通りです。価格がP1のとき、「価格=限界費用MC」の点は平均費用AC(=可変費用+固定費用)との交点にもなっています。この場合、「収入=費用」となるため、総収入は可変費用と固定費用の合計に等しく、可変費用も固定費用もすべて回収できている状態になっています。
b:その通りです。価格がP2のとき、「価格=限界費用MC」の点は平均可変費用の最小点より上、平均費用の最小点より下にあるため、可変費用の回収はできていて、固定費用の一部が回収できていない状態になっています。よって、企業の損失は固定費用の一部のみとなります。
c:誤りです。価格がP3のとき、「価格=限界費用MC」の点は平均可変費用AVCとの交点にもなっています。この場合、可変費用の回収はできていますが固定費用は一切回収できていない状態になっています。よって、企業の損失は固定費用の全額となります。
以上から、a:正 b:正 c:誤ですので
正解は選択肢イとなります。
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