今日は経済学のR3第8問について解説します。
金融政策に関する記述の正誤の組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答 群から選べ。
a 投資の利子感応度が大きいほど、貨幣供給量の増加がGDPを増加させる効果は、大きくなる。
b 貨幣数量説の考え方によると、貨幣供給量の増加は、物価水準を上昇させるとともに、実質GDPを比例的に増加させる。
c ケインズ的な金融政策の考え方によれば、貨幣供給量は経済成長率に合わせた一定率(k%)で増加させることが望ましい。
d 流動性のわなが生じているときの貨幣供給量の増加は、更なる利子率の低下がないために投資のクラウディング・アウトを伴うことなく、GDP を増加させる。
〔解答群〕
ア a:正 b:正 c:正 d:正
イ a:正 b:正 c:正 d:誤
ウ a:正 b:誤 c:誤 d:正
エ a:正 b:誤 c:誤 d:誤
オ a:誤 b:誤 c:誤 d:正
解説
マクロ経済学の金融政策に関する問題です。
それでは、早速各記述をみていきましょう。
記述aについて、投資の利子感応度が大きいということは、一定の利子率の変動に対して投資量がより大きく変動するということであり、IS曲線の傾きが緩やかだということです。そこで、貨幣供給量を増加させることでLM曲線を右方シフトさせることで、利子率が低下するため、投資の利子感応度が大きいことで、GDPの増加幅がより大きくなります。
以上の変化を図示すると以下のようになります。
よって、この記述は〇です。
記述bについて、貨幣数量説は経済学における古典派の貨幣市場についての考え方です。古典派の場合、GDPは常に完全雇用を実現したGDPになっているという考え方に基づくため、GDPは一定です。そのため、貨幣供給量によって実質GDPが増加することはありません。
よって、この記述は×です。
なお、古典派のケンブリッジ交換方程式(M = kPY)に基づくと、k(マーシャルのk)とY(完全雇用GDP)が一定のため。、貨幣供給量(M)を増加させると物価水準(P)が増加します。そのため、「貨幣供給量の増加は、物価水準を上昇させる」という記述は正しいです。
記述cについて、「貨幣供給量は経済成長率に合わせた 一定率(k %)で増加させることが望ましい」という考え方はマネタリストの考え方です。
よって、この記述は×です。
記述dについて、流動性のわなが生じているときの貨幣供給量の増加は、LM曲線を右方向にシフトさせますが、すでに利子率が最低の水準で投資が増加しないため、GDPは増加しません。
図示すると以下のようになります。
よって、この記述は×です。
以上からa:正、b:誤、c:誤、d:誤となり、正解は選択肢エとなります。