今日は経済学H30第14問の余剰分析(労働市場)に関する問題について解説します。
下図は、労働市場の需要曲線と供給曲線を示している。D は労働需要曲線、S は労働供給曲線であり、均衡賃金率は W0 である。労働市場における所得分配に関する記述として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
〔解答群〕
ア 最低賃金率を W1 に設定すると、市場均衡と比較して、企業の余剰は増加する。
イ 市場均衡において企業が労働者に支払う賃金は □OBEN0 である。
ウ 市場均衡における労働者の余剰は、△AW0E である。
エ 労働供給が増加すると、当初の市場均衡と比較して、企業の余剰は増加する。
解説
AD-AS分析で登場するAS曲線(労働市場の需要と供給)を余剰分析する問題です。
AS曲線は縦軸に実質賃金率、横軸に労働量を取り、労働需要(実質賃金の減少関数)と労働供給(実質賃金の増加関数)の交点(設問での点E)で労働量と賃金率が決定(均衡)します。
労働市場というひねりはありますが、生産者と消費者の余剰分析の考え方を基に解いていけば正解できると思います。この時、需要と供給の関係は以下の通りです。
・労働需要(D)…賃金の減少関数:(企業側)支払可能な賃金量
・労働供給(S)…賃金の増加関数:(労働者側)供給可能な労働量
それでは、選択肢を見ていきましょう。
選択肢アは、企業の余剰に関する説明です。点Eで均衡するとき、
・企業が支払い可能な賃金…□AON0E
・企業が実際に支払う賃金…□W0ON0E
となります。この場合、企業の余剰は△AW0Eとなります。
以上から、選択肢の通り最低賃金をW1と設定すると、支払うべき賃金がW0からW1まで上がってしまいますので、△AW0Eに比べて余剰が減少すると言えます。
よって、この選択肢は誤りです。
選択肢イは、選択肢アで述べた通り、点Eで企業が支払うべき賃金は□W0ON0Eとなります。
よって、この選択肢は誤りです。
選択肢ウについては、点Eで均衡するとき、労働量はW0です。よって、労働量の余剰は△W0BEとなります。
よって、この選択肢は誤りです。
選択肢エが正解です。ア~ウが誤りということから、消去法でも正答できますが、念のため図で確認しましょう。
労働供給Sが右側へシフトします(S’とします)ので、均衡点EがE’へ移動します。そうすると、W0もW2に移動します。このとき、企業の余剰は△AW2E’となり、均衡点Eでの企業の余剰△AW0Eよりも三角形の面積(=余剰)が大きいことが分かります。
以上より、選択肢エが正解となります。