今日は経済学H28第14問の需要と供給に関する問題について解説します。
下図には、相対的に緩い傾斜の需要曲線が破線で描かれ、相対的に急な傾斜の供給曲線が実線で描かれている。これら需要曲線と供給曲線の交点は、点 E として与えられている。この図に関する説明として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
〔解答群〕
ア 供給曲線が右下がりであるため、ワルラス的調整を通じて点 E へ収束する力は働かない。
イ 供給曲線の傾きが相対的に急であるため、「蜘蛛の巣理論」による調整を通じて点 E へ収束する力は働かない。
ウ 交点よりも価格が高いとき、需要量よりも供給量が多いため、価格調整を通じて点 E へ収束する力が働く。
エ 交点よりも数量が少ないとき、供給価格が需要価格よりも高いため、マーシャル的な数量調整を通じて点 E へ収束する力が働く。
解説
供給曲線が右下がりという見慣れない形をしていますが、解法は基本的な論点から導くことができます。
それでは、選択肢を見ていきましょう。
選択肢アは、ワルラス的調整の説明です。ワルラス的調整とは需要と供給が不均衡な場合に価格的調整で均衡する過程を指します。この場合、下図のように供給過剰(赤)が起きた場合は価格が下がり、供給不足(青)が生じていた場合は価格が上がることで点Eで均衡されると考えられます。
よって、この選択肢は誤りです。
選択肢イの「蜘蛛の巣理論」とは、数量と価格が変化しながら需要と供給が均衡点(点E)に収束する調整過程をいいます。均衡点に収束していく線形が蜘蛛の巣状を描くためそう呼ばれています。もし言葉が分からなくても、他の選択肢から正誤判断していきましょう。
この場合、以下の図のように蜘蛛の巣状ではないのですが、以下のプロセスを通じて価格が決まっていくので「点Eへ収束する力が働かない」という説明は不適切と言えます。
・供給量がQ1のとき、価格はP1→P2へ下がる
・価格がP2のとき、量はQ1→Q2へ増加する
・量がQ2の時、価格はP2→P3へ下がる
(以下、同じプロセスを繰り返して点Eへ収束する)
よって、この選択肢イは誤りです。
選択肢ウは点Eより左側の状況を説明しています。供給量が多いため、選択肢アでも説明したように価格を下げることで均衡点Eへ収束していくと考えられます。
よって、この選択肢が正解です。
念のため、選択肢エも確認しておきましょう。
選択肢エもまた点Eより左側の状況を説明しています。この場合、選択肢アで説明したように価格的調整(ワルラス的調整)で点Eへ収束します。
よって、この選択肢は誤りです。
以上より、選択肢ウが正解となります。