今日は、経営法務のR3 第17問 (2)について解説します。
以下の会話は、X株式会社の代表取締役甲氏と、中小企業診断士であるあなたとの間で行われたものである。この会話を読んで、下記の設問に答えよ。
なお、空欄Aは、設問ではなく、あえて空欄としているものであり、解答する必要はない。
甲 氏:「弊社は、初めて取引をする外国のY社に製品を輸出しようと考えており、Y社から契約書案が送付されてきたのですが、以下の条項は、どのような内容でしょうか。
PAYMENT
Y shall pay the Price to X by way of A to the bank account designated by X within thirty days after the delivery of the Products to Y under this Agreement.」
あなた:「この条項は、代金の支払方法につき、[B]の方法によることとされており、一般的に[C]という問題点があります。別の方法として、
売主のリスクを削減するために、信用状が用いられることがあります。」
甲 氏:「信用状を用いた取引とは、どういう流れなのでしょうか。」
あなた:「典型的な信用状取引の流れは、
① 売買契約に基づき、[D]が発行銀行に信用状の発行を依頼し、発行銀行が信用状を発行する。
② 発行銀行によって作成された信用状は、通知銀行に送られ、[E]に通知される。
③ 売主は信用状に記載された条件に従って船積みを行い、運送人から船荷証券の発行を受ける。
④ 売主は、為替手形を作成し、船荷証券とともに [F]に持参し、割り引いてもらう。
⑤ [F] は、船荷証券と為替手形を[G]に送り、支払いを受ける。
⑥ 発行銀行は、買主にその代金の支払いと引き換えに船荷証券を渡す。
⑦ 買主は運送人に船荷証券を呈示し、船積みした製品を受け取る。
というものです。なお、発行銀行の信用力が一定程度認められ、発行銀行の所在地国のカントリー・リスクも大きくないことを前提としています。」
甲 氏:「少し難しいですね。いずれにせよ、弊社としては、あまりリスクは負いたくないです。」
あなた:「Y社と契約交渉も必要かと思いますので、私の知り合いの弁護士を紹介しましょうか。」
甲 氏:「よろしくお願いします。」
(設問 2 )
会話の中の空欄D~Gに入る語句の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。
ア D:売主 E:買主 F:通知銀行 G:発行銀行
イ D:売主 E:買主 F:発行銀行 G:通知銀行
ウ D:買主 E:売主 F:通知銀行 G:発行銀行
エ D:買主 E:売主 F:発行銀行 G:通知銀行
解説
国際取引の中から、信用状を用いた取引に関する問題です。
まとめシートでは、英⽂契約書問題への対応は、⾃分の英語⼒を勘案して費⽤対効果を踏まえ検討することをおススメしています。
というのも、英⽂契約書に関する問題は例年1〜2問出題されており、元々ある程度英語ができる⽅は、英⽂契約書によく出る下記の単語を覚えることで、少ない労⼒で得点が期待できます。
しかし、中学⽣レベルすら危ういというような全く英語ができない⽅は、1〜2問のために新たに英語を学習するのは⾮常に労⼒がかかりますので、他の論点にその時間を充てた⽅が⾼い効果が期待できる、という理由からです。
それでは選択肢をみていきましょう。
D:発行銀行に信用状の依頼をする、とありますが信用状の発行を依頼するのは買主側です。もし知らなくても、そのあとに続く文の中で「発行銀行の所在地国のカントリー・リスクも大きくないことを前提として」とありますので、今回は買主である相手方のリスクについて触れていることが分かります。
よって、D:買主 です。
E:通知銀行から通知を受けるのは売主です。
よって、E:売主 です。
F:売主は、為替手形を作成し、船荷証券とともに [F]に持参し、割り引いてもらう、とありますので、持ち込み先は自国の銀行である「通知銀行」と分かります。
よって、F:通知銀行 です。
G:最後に、通知銀行(売主=自国)から発行銀行(買主=相手国)に船荷証券と為替手形を送り、通知銀行は発行銀行から支払を受けます。
よって、G:発行銀行 です。
以上から、D:買主 E:売主 F:通知銀行 G:発行銀行
ですので、正解は選択肢ウとなります。
設問1の解説はこちら
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