【過去問解説(経営法務)】H30 第7問 会社法(資本金の増減・債権者保護手続)

今日は経営法務H30第7問の会社法(資本金の増減・債権者保護手続)に関する問題について解説します。

経営法務H30第7問

資本の部の計数の増減に関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア 資本金の額を減少させ、その減少させた金額と同じ金額だけその他資本剰余金の額を増やすためには、債権者異議手続を行う必要がある。
イ 資本金の額を減少させ、その減少させた金額と同じ金額だけ利益準備金の額を増やすためには、債権者異議手続を行う必要がある。
ウ 資本準備金の額を減少させ、その減少させた金額と同じ金額だけ資本金の額を増やすためには、債権者異議手続を行う必要がある。
エ その他資本剰余金の額を減少させ、その減少させた金額と同じ金額だけ資本金の額を増やすためには、債権者異議手続を行う必要がある。

 

解説

資本金は出資者にとって担保のような存在になりますから、債権者の保護に根差した制度が会社法で定められています。
なお、「債権者異議手続」は「債権者保護手続」と同じです。組織再編や出資価額の変更などにおいて、債権者の利害に影響が出る場合に行われる手続を指します。
それでは選択肢を見ていきましょう。

選択肢アは、資本金を減少させるので減資の手続です。減資は株主にとって不利な状況となりますから、原則として株主総会の特別決議が必要であり、債権者異議手続も必要となります。
よって、この選択肢が正解です。

念のため、他の選択肢も確認しておきましょう。

選択肢イも選択肢アと同様に資本金を減少させる手続きを説明していますが、そもそも資本金を準備金に組み入れる場合は、資本準備金としなければなりません(会社法第448条、会社計算規則第25条)。したがって、このような手続きは認められていません。
よって、この選択肢は誤りです。

選択肢ウは資本準備金の減少に関する説明です。準備金の減少は、株主総会では普通決議が要件となり、債権者異議手続も必要です。しかし、資本金に組み入れる場合は株主に有利な状況になりますから、債権者異議手続は不要とされています。
よって、この選択肢は誤りです。

選択肢エも資本金を増加に関する手続きの説明です。この場合も、資本金に組み入れる場合として債権者に有利な状況になりますから、債権者異議手続は不要とされています。
よって、この選択肢は誤りです。

以上より、選択肢アが正解となります。

 

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