【過去問解説(経営法務)】H30 第12問 商標権

今日は経営法務H30第12問の商標権に関する問題について解説します。

経営法務H30第12問

以下の会話は、中小企業診断士であるあなたと、地元の民芸品を扱う事業協同組合Xの理事である甲氏との間で行われたものである。会話の中の空欄に入る語句として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。

甲 氏:「うちの民芸品は全国的にも有名だと思うのですが、知的財産権で保護することができないでしょうか。」

あなた:「そうですね。意匠や実用新案は新規性が要求されますから難しいでしょう。でも、商標には立体商標という制度があります。実際、飛騨地方の『さるぼぼ』や太宰府天満宮の『うそ』が、『キーホルダー』を指定商品とした立体商標として商標登録を受けているんですよ。」

甲 氏:「へぇ、立体の商標ですか。」

あなた:「そうです。【 空 欄 】の立体商標は、『使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるもの』ならば、商標登録を受けることができますから、長年使用されている民芸品は立体商標の登録を比較的受け易いのです。」

甲 氏:「なるほど。長年使っているからこそ登録を得られる商標があるのですね。」

あなた:「地元の弁理士さんを紹介しますので、相談してみてはいかがでしょう。」

甲 氏:「よろしくお願いします。」

〔解答群〕
ア その商品の形状等を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標
イ その商品又は役務について慣用されている商標
ウ その商品又は役務の普通名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標
エ 他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標

 

解説

商標の自他商品・役務識別能力に関する問題です。商標権の登録には、自己と他人の商品・役務を区別することができる必要があります。
そこで、商標法第3条では選択肢ア~エに掲げているもの等を、原則として商標登録を受けることができないとしています。
しかし、同第3条1項および2項において、以下の3点について、『使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるもの』は商標登録を受けることが出来るとしています。

(商標法第3条1項より)

その商品の形状等を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標(=選択肢ア)
・ありふれた氏または名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標
・極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標

従って、選択肢アが正解となります。

この問題は論点がやや込み入っておりますが、『使用された結果~』という部分から推測すると、選択肢エは文言が成り立ちません。選択肢エを当てはめた文章では、使った結果、他の商品と混同を生ずることになり、自他商品・役務識別能力があるとはいえません。

また、選択肢イや選択肢ウも似通っておりますが、普通名称(アルミニウム 等)や慣用されている(お祝い事で用いられる紅白の幕 等)という時点で、他の商品との識別能力は持ちえないと考えられます。

 

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