今日は、経営法務のH29 第16問について解説します。
A株式会社以下「A社」という。とB株式会社以下「B社」という。との間の民事留置権又は商事留置権に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア A社がB社に売却した機械αの代金が、弁済期の到来にもかかわらず支払われていない状況で、B社がCに機械αを売却した場合、A社が機械αを引き渡さず占有しているとしても、機械αは債務者であるB社の所有物ではなくなったことから、A社は機械αについて留置権を主張することができない。
イ A社がB社に売却した部品αの代金が、弁済期の到来にもかかわらず支払われていない場合に、A社がB社に部品αを引き渡したとしても、A社は部品αについて留置権を主張することができる。
ウ A社がB社に売却した不動産αの代金が、弁済期の到来にもかかわらず支払われていない場合でも、A社がB社に不動産αの登記を移転してしまうと、A社は不動産αについて留置権を第三者に対抗できない。
エ 店舗で販売するために小売業者であるB社が卸売業者であるA社から購入した商品αの代金が、弁済期の到来にもかかわらず支払われていない場合に、A社がB社から売買代金を受領し、引き渡すだけの状態にある商品βについて、A社は留置権を主張することができる。
解説
留置権に関する問題です。
まとめシートでは、以下の通り解説しています。
留置権とは、「修理費を払わないのなら車を返さない」といったように、他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、債権の弁済を受けるまでその物を留置することができる権利のことです。
これを踏まえて選択肢をみていきましょう。
選択肢ア:誤りです。
B社はA社に対する弁済ができておらず、A社が機械αを保有しているため、Cに対しても留置権を主張できます。
よって、この記述は×です。
選択肢イ:誤りです。
B社はA社に対する弁済ができていませんが、部品αを引き渡してしまっているため、その物を留置することができる権利である留置権を主張できません。
よって、この記述は×です。
選択肢ウ:誤りです。
B社はA社に対する弁済ができておらず、A社がB社に不動産αの登記を移転したとしても、不動産αについて留置権を第三者に対抗できます。
よって、この記述は×です。
選択肢エ:その通りです。
民法上の留置権の場合、債権者が留置することができるのは目的物に限られますが、商行為の場合、目的物以外の債務者の所有物についても、債権者は留置することができます。この場合、弁済の対象となっているのは商品αの代金ですが、既に売買代金を受領している商品βについて留置権を主張することができます。
よって、この記述は〇です。
以上から、正解は選択肢エとなります。
◆ブログ村参加しています◆
気に入っていただけたら、クリックお願いします!
関連教材で学習効率アップ!