今日は、経営法務のR3 第13問について解説します。
株式会社甲(以下「甲社」という。)は、商標「〇〇〇」を付した洋菓子Aを製造販売している。
ところが、甲社は昨日、株式会社乙(以下「乙社」という。)から、次の趣旨の警告書を受け取った。
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貴社の製造販売する洋菓子Aの商標「〇〇〇」は、弊社が指定商品「洋菓子」につい
て商標登録を受けた商標と類似である。直ちに商標「〇〇〇」を付した洋菓子の製造
販売を中止するように。
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この警告書を受けて甲社から、中小企業診断士のあなたは相談を受けた。
あなたは、甲社が商標「〇〇〇」について先使用権を主張できる可能性があると考え、この旨を甲社に告げた。
先使用権に関する以下のあなたの説明の[空欄]に入る記述として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
あなた:日本国内において不正競争の目的でなく、[空欄] 、御社は継続して洋菓子Aについて御社商標「〇〇〇」の使用をする権利を有します。この権利は先使用権と呼ばれ、商標法に規定されています。
〔解答群〕
ア 乙社の商標登録出願後であってもその商標が登録される前から、御社が洋菓子Aについて御社商標「〇〇〇」を使用していた結果、乙社の商標登録の際、現に御社商標「〇〇〇」が御社の業務に係る洋菓子Aを表示するものとして、需要者の間に広く認識されているときは
イ 乙社の商標登録出願後であってもその商標が登録される前から、御社が洋菓子Aについて御社商標「〇〇〇」を使用してさえいれば、乙社の商標登録の際、現に御社商標「〇〇〇」が御社の業務に係る洋菓子Aを表示するものとして、需要者の間に広く認識されていないときでも
ウ 乙社の商標登録出願前から、御社が洋菓子Aについて御社商標「〇〇〇」を使用していた結果、乙社の商標登録出願の際、現に御社商標「〇〇〇」が御社の業務に係る洋菓子Aを表示するものとして、需要者の間に広く認識されているときは
エ 乙社の商標登録出願前から、御社が洋菓子Aについて御社商標「〇〇〇」を使用してさえいれば、乙社の商標登録出願の際、現に御社商標「〇〇〇」が御社の業務に係る洋菓子Aを表示するものとして、需要者の間に広く認識されていないときでも
解説
商標の先使用権に関する問題です。
先使用権についてのポイントは以下の通りです。
・特許権、実⽤新案権、意匠権、商標権に認められている
・出願された特許、考案、意匠、商標と同⼀のものを出願前から善意で(それらの内容を知らずに)実施している者に認められる
・商標については、先使⽤権が与えられるには出願の時点で周知性が必要
・周知性とは、「⾃⼰の業務にかかる商品、役務を表⽰するものとして需要者の間に広く認識されていること」とされる
ちなみに、本問は一見すると文章が長く難しそうに見えますが、テクニックとして以下のようにポイントを絞って読み進めると内容が整理できます。
①先に問題文の空欄前後を読んでみる→先使用権についての問題と書いてある
②それぞれの選択肢の異なる点を探す→先使用権の要件のうち何に、ついて聞かれているかが分かる
それでは選択肢をみていきましょう。
まずは、選択肢の冒頭を確認していきます。
選択肢ア、イと選択肢ウ、エの違いは先使用権の周知性が必要となる時点についてです。
選択肢ア、イ:「乙社の商標登録出願後であってもその商標が登録される前から」
選択肢ウ、エ:「乙社の商標登録出願前から」
→先使⽤権が与えられるには乙社の出願の時点で甲社の商標の周知性が必要ですので、選択肢はウとエに絞られます。
次に、選択肢ウ、エの違いは周知性そのものについてです。
(御社商標「〇〇〇」が御社の業務に係る洋菓子Aを表示するものとして、)
選択肢ウ:需要者の間に広く認識されているときは
選択肢エ:需要者の間に広く認識されていないときでも
→先使用権が与えられるには周知性が必要ですので、選択肢ウの文章が正しいです。
以上から、正解は選択肢ウとなります。
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