【過去問解説(法務)】H29 第15問 英文契約書

今回は、H29年経営法務の第15問の英文契約書に関する問題について解説します。

H29 第15問

以下の会話は、中小企業診断士であるあなたとX株式会社の代表取締役甲氏との間で行われたものである。この会話を読んで、下記の設問に答えよ。
甲 氏:「α国に本社のあるβ会社との間で、当社で製造している機械を継続的に販売するために、英文の基本売買契約書を締結することになりました。相手方から次のような契約書案が届いたのですが、この条項は、何を定めているのでしょうか。」
If any of the following events occurs on either party,the other party may terminate this Agreement by giving a written notice thereof:
(a) if either party fails to perform any provision of this Agreement or any other agreements between the parties,which failure remains uncorrected for more than eighty days after receipt of a written notice specifying the default;
(b) if either party files a petition or has a petition filed against it by any person for bankruptcy or corporate reorganization;
(c) if either party disposes of the whole or any substantial part of its undertaking or its assets;
(d) if control of either party is acquired by any person or group not in control at the date of this Agreement.
あなた:「これは、解除条項を定めています。具体的には、[ A ]場合に、契約を解除することができることになっています。」
甲 氏:「債務不履行に基づく解除については、どうなっていますか。」
あなた:「[ B ]」
(設問1)
会話の中の空欄Aに入る語句として、最も不適切なものはどれか。
ア 事業譲渡があった
イ 支配権の移転があった
ウ 破産の申立てがあった
エ 罰金刑が科された
(設問2)
会話の中の空欄Bに入る記述として、最も適切なものはどれか。
ア β会社との間の他の契約にβ会社の債務不履行があった場合でも、X株式会社は本契約を解除できません。
イ β会社に債務不履行があった場合、β会社は本契約を解除できます。
ウ 契約条項違反があった場合、本契約を即時に解除できます。
エ 債務不履行の内容は書面で通知する必要があります。

解説

今回は英文契約書の問題を取り上げます。
英文契約書の問題は、ご自身の英語力によって対策の優先度が大きく変わってくる問題です。

英語はさっぱり・・・という方は、今から英語を学びなおすのはとても大変ですので潔く捨てて、その分知財などの頻出論点で取り返すつもりでいきましょう。
ただ、潔く捨てる選択をした場合でも、問題をよく見てみると英文を読まなくても解ける問題になっている可能性も0ではありませんので、時間に余裕があれば、念のため英語が読めなくても解けないかトライしてみる価値はあるかと思います。

英語がそれなりにできる方は、まとめシートにも掲載しているような英文契約書関連で良く出てくる単語を押さえておくとチャンスが広がるでしょう。

ちなみに、英文契約書の問題は2次試験で与件文の前に説明を読むのと同じように、冒頭の問題文よりも先に設問文を見て、どのような情報を探す必要があるのかということを頭に入れながら読むと効率的です。

それでは早速考えていきましょう。

英文を読みにかかる前に、まずは各設問で何が問われているか、つまり何を与件文から探しに行けばいいかということを確認します。

設問1は空欄Aに入る語句で最も不適切なものが問われています。
選択肢を見ると、あまりよろしくないことがずらっと並んでいます。

では、空欄Aは何を問われているかというと、「これは、解除条項を定めています。具体的には、[ A ]場合に、契約を解除することができることになっています。」とあるので、上の英文を読んで、解除条項に定められているものとそうでないものを判別せよ、と言っていることが分かります。
そのため英文を読むときは、選択肢にあるようなことが英語で書いてあるかどうかをチェックすればよいということになります。

設問2は空欄Bに入る記述が問われています。
選択肢を見ると、どうやら債務不履行に関連した記述のようです。
債務不履行を意味する英語はdefaultですので、defaultという言葉が入っている周辺の文章をよく読めばいいということが分かります。

それでは英文を見ていきましょう。
英文を読んでいくと(a)の文章の中にdefaultという言葉があります。
なので、ここは設問2を解くカギとなる文章だと考え、丁寧に読んでいきます。
(a)の文章をざっくりと訳すと
どちらかの関係者がこの契約もしくは関係者間で合意されている他の契約の規定を実行できず、その履行できない状態が債務不履行を明記した書面による通知を受け取った後80日以上直されないとき
と書いてあります。
これだけだと情報が不足しているので、その前提となる一番上の記述も読んでみると、
もしどちらかの関係者に以下のような事態が起きたら、他の当事者は書面による通知を与えることで、この契約を解除することができる。

と書いてあります。

これを踏まえると、
選択肢アは、債務不履行があったら契約を解除することができると書いてあるので×です。

選択肢イは、契約を解除できるのは、債務不履行をした側ではなくされた側と書いてあるので×です。

選択肢ウは、書面による通知を受け取った後80日以上直されないときと書いてあるので×です。

選択肢エは、その通りで、契約不履行は書面で通知する必要があるため〇です。

以上から設問2の正解は選択肢エとなります。

次に設問1について考えます。
冒頭の文面を踏まえると、(a)~(d)に具体的な解除の条件が書いてあるということがわかり、先ほど読んだ(a)の中に設問1の選択肢に該当するものはなかったので(b)~(d)を読んで、そこに書いていないものが正解ということになります。

まず(b)を見てみると、bankruptcyという単語が目に入ります。これは破産という意味ですので、選択肢ウは〇と考えることができます。

次に(c)を見てみるとdisposesという単語が見つかります。disposeとは処分という意味で、処分とはこの場合、売却や譲渡のことです。そのため、選択肢アは〇と考えることができます。

最後に(d)を見てみましょう。controlという単語が見つかりますので、支配権について言っている文章だとわかります。そのため、選択肢イは〇と考えることができます。

以上から残ったのはエの「罰金刑が科された」で、念のためそれっぽい単語を探してみても「罰金刑」に相当するfineとかpunishmentといった言葉は見当たりません。
以上から設問1の正解は選択肢エとなります。

 

 

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