今回は、H24年経営法務の第7問について解説します。
H24 第7問
商標権の効力に関する記述として最も適切なものはどれか。
ア 指定商品「菓子」についての登録商標「恋人」の商標権者は、「菓子」と「パン」は相互に類似する商品と見なされているとしても、他人に「パン」について登録商標「恋人」を使用する権利を許諾することはできない。
イ 他人の商品「おもちゃ」に係る商標「スター」についての商標登録出願前から、商標「スター」を周知性を得られないまま善意で商品「おもちゃ」について使用していた者は、たとえその商標登録出願が商標登録された後でも商標「スター」を商品「おもちゃ」について継続的に使用することができる。
ウ 他人の著名な漫画の主人公の図柄について商標登録した場合でも、商標権者は、他人の承諾を受けることなく、漫画の主人公の図柄から成る登録商標をいずれの指定商品についても使用することができる。
エ 他人の登録商標と同一であっても、自己の氏名であれば、商標として使用することができる。
解説
今回は商標権に関する問題です。
それでは早速各選択肢について見ていきましょう。
選択肢アは、その通りで、商標権者は類似する商品に対して禁止権は持っていますが、使用する権利を許諾するということはできません。
以上で答えが確定できましたが、念のため残りの選択肢も確認していきます。
選択肢イは、他人の商標をその人が商標登録する前から使っていた場合、その商標を無償で使い続けることができる、先使用権が適用されるかどうかについての問題です。
先使用権が認められるためには、
①他人の商標登録前からその商標を使っている
②不正競争の目的で使用していたものではない
③他人がその商標を登録した時点で需要者の間に広く認識されている
ことが条件です。
この問題では、「周知性を得られないまま」と書かれていますので、残念ながら先使用権は認められないと考えられます。
よって、この選択肢は×と判断できます。
選択肢ウについて、他人の著名な漫画には、商標権が設定されていなくても、著作権は発生しています。
他人が著作権を持っているものを勝手に商標登録することはできませんので、この選択肢は×と判断できます。
選択肢エは、その通りで〇と考えられますが、そうすると選択肢アとエが〇になってしまいます。
このような場合は、どちらがより〇っぽいかという観点から考えます。
選択肢エは、「他人の登録商標と同一であっても、自己の氏名であれば、商標として使用することができる」とありますが、自己の氏名を商標として使用する場合「普通に用いられる方法で表示する場合」とされています。
そのため、普通に用いられる方法でない形で表示する場合は、他人の登録商標と同一であっても、自己の氏名を商標として使用することはできないといえます。
これは、例えば、「松本清」さんという名前の方が、「松本清」というドラックストアを新たにオープンする場合、「自己の氏名を普通に用いられる方法」で表示しているのでOKですが、カタカナで「マツモトキヨシ」と表示すると、それは「自己の氏名を普通に用いられる方法」ではないと判断され、アウトとなってしまうかもしれない、というものです。
以上から、どちらかというと選択肢エが×なのではと判断することができます。
よって、正解は選択肢アとなります。
このように、時には〇が2つあるように見える非常に悩ましい問題が出てくる場合があり、モヤっとすることもあるかもしれません。
このような問題に対して、勉強の段階でモヤモヤするのは別に問題はありませんが、試験中はモヤモヤするとペースが乱されてしまうため注意しましょう。
対策としては「時にはこんな微妙な問題が出題される」ということを知っておき、いざ本番で出くわしたときは「お、微妙問題今年も出てしまったか」と客観視できるようになっておくという方法があります。
モヤモヤ問題もあり得る、と考えて試験を冷静に乗り切りましょう。
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